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【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 7月9日発】タイの豚の価格は、昨年の通貨 危機の影響を受けて本年1月には底値となったが、養豚農家の生産縮小などによる 供給頭数の減少により、徐々に回復している。タイの養豚団体は、来年まで生産頭 数の減少が見込まれているため、引き続き同価格が上昇するものと楽観視している。 豚の価格は、昨年9月から通貨下落の影響が出始め、同月以前40バーツ(1バ ーツ=約3.4円)を超えていた生体豚1s当たりの全国平均農家販売価格が、今 年1月には29バーツの最低価格を記録し、ブロイラーの農家販売価格をも下回っ た。また、昨年8月以前、1,000バーツおよび51バーツを超えていたチャロ ン・ポカパンが販売する子豚価格およびバンコック市場における豚肉1s当たりの 卸売価格は、今年1月には250バーツおよび36バーツにそれぞれ急落し最悪の 状況となった。しかし、6月におけるそれらの価格は、同農家販売価格が38バー ツ、同子豚価格が900バーツ、同卸売価格が51バーツまでに回復し、通貨下落 以前の価格水準まで戻ってきている。 この価格の上昇は、需要の増加によるものではなく、通貨危機の影響を受けた養 豚農家の規模拡大意欲の減退もしくは廃業などが原因による豚の生産縮小によるも のとなっている。 また、ここ2〜3カ月、飼料価格は安定してきたものの、1s当たりの平均豚肉 生産コストが、96年の約33バーツに比べ12%も上昇し約37バーツとなって いるため、多くの養豚農家では、資金繰りの悪化などにより、現在においても苦し い経営状況が続き、将来の高値を期待した規模拡大を行うどころか、逆に生産規模 の縮小などを余儀なくされ、生活を維持するために、やむなく養豚経営を継続して いる状況となっている。 タイ養豚生産者協会は、豚の生産頭数が来年まで減少傾向で推移するとみている ことから、同価格は緩やかに上昇すると予測し、これからの養豚経営は満足できる ものになるとしている。さらに、経済の回復が速まり、豚肉消費が増加するような ことになれば、同価格は急騰し養豚農家にとって最良の年になると楽観視している。 一方、食肉流通業者などでは、現在の深刻な経済危機は、すぐに回復するとはみ ておらず、同価格は上昇するどころかむしろ現在の価格より下落するとして、減退 した消費者の豚肉需要を回復することが先決として、豚肉の廉価販売に努めている。 また、同者は、仮に同価格が上昇した場合でも、政府が価格介入などにより値上げ を制限するとともに、豚肉の輸入により供給量を増加させ値上げを押さえるとして、 その対策に期待するとしている。
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