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地球温暖化防止とEU農業


【ブラッセル駐在員  池田  一樹  6月24日発】 昨年開催された地球温暖化防止
京都会議の締約国は、温室効果ガスの排出量の削減に合意した。これを受けて、今般、
EU委員会は、削減約束の実施に向けた基本的な考え方をEU理事会などに報告した。
運輸、エネルギーなどの分野と並んで、農業分野での取り組みの方向性が取りまとめ
られている。

 京都会議で合意された排出量削減の対象となる温室効果ガスは、二酸化炭素(CO2)、
メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)など6種類で、EUは、2008年から
2012年の間に、その総量を90年レベルから8%削減することを約束している。

 今回の報告は、EUおよび加盟国が、約束の実施に向けた施策の枠組みを設定する
ために、その基本的な考え方を取りまとめたものである。

 報告書では、まず産業分野ごとに温室効果ガスの排出状況や、その削減目標を達成
するための潜在的な可能性が掲げられている。農業分野については、@EUの主要な
温室効果ガス(二酸化炭素、メタンおよび亜酸化窒素など)の総排出量の8%を排出
しているが、エネルギー関連の排出量は2%以下、Aメタンおよび亜酸化窒素につい
ては、EUの総排出量のそれぞれ45%および40.3%   (90年)を占めている
とされている。メタンについては、家畜の消化プロセスやふん尿が主要な発生源であ
り、亜酸化窒素については、肥料が主な発生源であるとされている。一方、農業が林
業も含めて、化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど地中に埋蔵されている再生産ので
きない有限性の燃料資源)をバイオマス(エネルギー資源として利用できる生物体)
に変換したり、シンク(吸収源、光合成による固定や水へ吸収を示し、発生源に対す
る用語)としての機能により、特に二酸化炭素を除去する役割を果たすと述べられて
いる。

 次いで、削減目標の達成に当たって、重要となる産業分野を掲げ、その基本的な対
策方針が述べられている。この中で、農業分野も、運輸やエネルギーなどの分野と並
んで取り上げられており、EUがまず着手する必要のある対策が次の通り掲げられて
いる。

1 集中的な研究の推進
2 農村開発の下での適切な植林
3 自主的な休耕の枠組みの中での再生可能エネルギー穀物の生産振興
4 メタンの排出削減については、@農村開発計画、特に投資への助成を通じた、家畜
  のふん尿のより良い取り扱いと貯蔵、A家畜のより良い飼養に関する研究の奨励
5 窒素酸化物の排出削減については、CAP(共通農業政策)改革案で提案されてい
 る農産物の介入価格の引き下げを通じた、農業分野における窒素酸化物の主たる発生
 源である肥料の使用量の削減、A農業と環境保護措置を一層推進し、肥料の削減と有
 効利用の実現、B条件不利地域対策の推進により、投入量の少ない農業生産体系や環
 境保全型農業の維持強化、C(CAP改革案で)提案されている直接所得補助制度の
 運用に当たり、施肥に関する条件を遵守した場合における、加盟国の積極的な補助金
 の交付

 EU委員会は、来年の上半期に、域内での取り組みの進ちょく状況を取りまとめる
こととしている。


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