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豪生乳生産、干ばつ傾向ながらも増産基調


【シドニー駐在員 藤島 博康 3月4日発】豪州での搾乳シーズン前半となる
97年7月から12月までの生乳生産量は、前年同期を5.7%上回った。主要
生産地域の一部では、酷暑と降雨不足により草地状態はかなり悪化しているとさ
れるものの、97/98年度通算でも前年度を3〜4%上回ることが予想されて
いる。 

 豪州での搾乳年度(7月〜6月)の第1四半期にあたる97年7月から9月ま
での生乳生産量は、天候に恵まれ春先の牧草の生育状態が良好だったことや、搾
乳牛頭数の増加により、前年同期を大きく上回るペースで拡大していた。

 しかしながら、11月に入ってから続く主要生産地域での酷暑と降雨不足によ
る草地状態の悪化から、拡大ペースは減速する方向にある。

 この影響は、豪州全体の6割を占めるビクトリア州で最も強く、7月〜12月
までの累計では前年同期より4.9%の増加となったものの、12月単月では
0.3%とわずかながらも前年同月を下回った。

 その他の州も、11月までは前年水準を6%〜10%も上回る生産が続いてい
たが、12月に入ってからは、サウスオーストラリア州を除いて大きくペースダ
ウンした。この結果、豪州全体としての今シーズン上半期の生乳生産量は、前年
同期より5.7%の増加にとどまった。

 降雨不足は、ビクトリア州やタスマニア州の豪州南東部で深刻化しており、一
部地域では著しい乾燥状態にあるとされ、今シーズン下半期の生産に大きな影響
を与えそうだ。

 特に、ビクトリア州のギプスランド地方と称される主要な生産地帯では、青々
とした牧草地での放牧が例年の姿であるものの、今年は降雨不足により牧草の生
育状態が悪化しており、少なからぬ酪農家が乾草や穀物など飼料の購入を余儀な
くされているとされる。この地方は昨年夏場もかなりの酷暑に見舞われており、
二シーズン連続での購入飼料費の増加は、酪農家の経営を著しく圧迫していると
みられる。

 また、かんがいに依存しているビクトリア州北部の生産地域でも、生産量は前
年水準を超えるペースで増加しているものの、かんがい経費は増加傾向にあると
される。

 豪州の生乳生産量は、90年代に入って、年率5%の勢いで拡大しているが、
高乳価が刺激となって、購入飼料やかんがいを利用しても生産を維持する方向に
あるようだ。また一方で、生産拡大の背景には、近年の乳製品工場の効率化、大
規模化によって、一定量の生乳生産が要求されるという側面も生産拡大の一因に
挙げられよう。

 主要生産地域での生産環境の悪化がみられながらも、97/98年度通算の生
産量も過去最高となる93億〜94億リットル(前年度比3〜4%増)と予想さ
れている。


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