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乳調製品の輸入急増に悩むカナダ酪農


【デンバー駐在員 本郷 秀毅 3月5日発】カナダ連邦政府は、カナダ国際貿
易裁定委員会(CITT)に対し、関税割当の対象となっていない乳製品を含む
調製品の輸入急増問題に関して、この問題を調査・検討するとともに、98年7
月1日までに調査結果に関する報告書を提出するよう要請した。 

 カナダは、先のウルグアイ・ラウンド農業合意において、同国の酪農産業を守
るため、牛乳・乳製品およびその調製品に対して関税割当制度を適用するととも
に、同製品に対して300%前後の2次関税を課すことにより、実質的に輸入禁
止的な措置を講じることとしていた。

 しかしながら、カナダ政府は、実行上は乳製品を50%以上含む調製品に対し
ては関税割当制度を適用することとしたものの、乳製品が50%未満の調製品に
ついては関税割当制度の対象としなかった。

 この結果、WTO協定が実施に移された95年以降、このような規定のすき間
を利用した乳調製品の輸入が急増することとなった。具体的に輸入が急増してい
るのは、砂糖51%、バターオイル49%からなる乳調製品であり、主に低価格
帯のアイスクリームの原料として利用されている。

 バターオイル・砂糖調製品は、主に米国から輸入されており、そのほかニュー
ジーランド、メキシコ、EUなどからも輸入されている。96年の輸入量は前年
の約2倍の3,800トンであり、97年には、当初の9カ月だけでも既に前年
の2倍以上の7,900トンとなっており、その急増ぶりが伺える。カナダ酪農
生産者連盟(DFC)によれば、乳調製品の輸入によるカナダ酪農産業の損失額
は、年間5千万カナダドル(約43億円)以上に及ぶとしている。

 このようなバターオイル・砂糖調製品の輸入急増に対し、DFCは、連邦政府
対して、過去1年半以上もの間、同製品の輸入が実質的に停止するよう、これを
関税割当の対象となる関税番号に再分類するよう要求していた。

 このような要求を背景として、今般、連邦政府は、CITTに対して、WTO
協定の関税割当制度によってカバーされていないバターオイル・砂糖調製品を含
む乳調製品の輸入問題について調査・検討するよう要請した。今回の要請に基づ
き、CITTは、乳調製品の輸入がカナダの酪農生産者および産業に与える影響
や、法的、技術的および商業的影響、さらには国際的な権利および義務について
も検討することとなっている。

 しかしながら、カナダは、WTO協定に加え北米自由貿易協定(NAFTA)
においても、50%未満の乳調製品を関税割当の対象としない旨を約束しており、
これを覆すことは相当困難とみられている。

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