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【シンガポール駐在員 外山 高士 3月12日発】 シンガポール政府の調査に よると、同国では動物性たんぱく質のうち鶏肉が最も多く消費されており、そのシ ェアは拡大傾向で推移している。ファストフードなどの進展が主な理由であるが、 外食の機会の多い同国では、鶏肉の消費は増加傾向で推移するものと見られている。 先般、シンガポール政府が実施した調査によると、10年前の調査に比べ、動物 性たんぱく質摂取量に占める鶏肉の消費量の割合が増加しており、魚肉を抜いてト ップとなった。 シンガポールは、人口約304万人で、うち中国系住民が235万人(77.3 %)と構成割合が高いことから、中華料理に多く使われる鶏肉と豚肉の消費量が、 牛肉等に比べて非常に多い。しかし、同国にはシンガポール人の他に、日本人を含 む約60万人の外国人長期滞在者や、年間700万人を超える観光客などが消費量 に大きく関係していることから、供給量等から国民1人当たりの消費量を求めるこ とは非常に困難である。 この度、同国の政府は、18歳から69歳までのシンガポール人460名に対し て、食品に関する聞き取り調査を実施し、同国民の食品消費の傾向に関する報告書 をまとめた。これによると、96年の国民1人当たりの消費量は、鶏肉37.8s /年(骨付きベース)、豚肉27.2s/年(枝肉ベース)、牛肉3.8s/年 (同)、羊肉2.6s/年(同)となっており、鶏肉の動物性たんぱく質摂取量に 占める割合が最も高い結果となった。86年の同様の調査と比較すると、当時最も 多く消費されていたものは魚で、鶏肉の1人当たり消費量の1.29倍であった。 しかし今回の調査では、鶏肉の0.79倍とトップの座を鶏肉に譲ることとなった。 また、豚肉については、0.94倍から0.72倍に、牛肉については、0.13 倍から0.10倍に、羊肉についても0.09倍から 0.07倍へと、それぞ れ減少しており、鶏肉の動物性たんぱく質摂取量に占める割合が増加していること を示している。 なお、卵の消費については、1週間に1〜2個の卵を食べると答えた人が男性 31%、女性44%で、7個以上食べると答えた14%を大きく上回っている。ま た、牛乳については、37%の人が飲む習慣がないと答えた。 これらの傾向は、従来から外食機会の多い同国の食習慣に、外資系のファストフ ードが進展してきたことが主な要因と見られており、この報告書においても、チキ ンナゲットやフライドポテトなどの油で揚げた食品の消費回数が、1週間に2回以 上と答えた人が男性49%、女性57%という数字にも、このことが表れている。 また、これらの鶏肉は、全てを輸入に頼っていることから、輸入量は、年々増加傾 向で推移しており、96年は約15万トン(骨付きベース)で前年比125.9% の増加となっている。 これらのことから、同国での鶏肉の消費量は、若年層を中心とした外食での伸び に支えられ、今後とも増加傾向で推移するものと見られている。
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