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家畜への薬物使用の規制を強化(マレーシア)


【シンガポール駐在員 外山 高士 5月14日発】  マレーシアの保健省は、人
体に有害な薬物の含まれた食肉を販売した業者に対する罰則などを含む法律を改正
した。生産段階における薬物の違法な使用が問題となっていたためで、今後、消費
者の食肉に対する安全性への関心が高まるものと思われる。

 マレーシアの保健省は、人体に有害な薬物が含まれた食肉を販売した業者を、禁
固または罰金刑に処する法律の改正を発表した。

 同国では、最近輸入販売の禁止されている興奮剤や抗生物質などの薬物が、98
年4月の摘発で約100万リンギット(1リンギット=35.5円)も差し押さえ
られるなど、昨年だけで324件の無免許の薬物販売業者が摘発されており、薬物
の違法販売が増加していた。この差し押さえられた興奮剤は、肉用家畜の成長促進
剤として使われているものであるが、この興奮剤が残留している食肉を心臓病や糖
尿病を患っている人たちが食べた場合、不眠症や食中毒といった副作用を起こすこ
とから、1967年から輸入販売が禁止されている薬品であった。また、抗生物質
は、養鶏農家と養豚農家の多くが、疾病予防のため飼料の中に混ぜて使用されてい
たもので、この抗生物質が残留している鶏肉などを食べた場合、特定の病気に対す
る抵抗性を低下させる恐れがあることから、輸入販売の際には保健省の許可が必要
となっていた。

 しかしながら、保健省によると、昨年の5月の調査において豚肉のサンプルのう
ち、39%からこの興奮剤が検出されるなど、生産段階での違法な薬物使用が、大
きな問題となっていた。

 このため、保健省では畜産農家に対して、4月の中旬までに、所有しているこの
興奮剤などの違法薬物を破棄するよう通告を出すなど、食肉の生産段階での薬物使
用の指導に乗り出していた。

 今回改正された法律は、1947年に制定された薬品に関する法律で、これまで
人が直接摂取する薬品のみを対象としていたものを、家畜などに使用する薬品にも
適用するほか、違反者に対する禁固や罰金刑も含まれている。またこの改正には、
畜産農家で使用する薬品、特に肉用家畜に投与されるものは、保健省によりその流
通が規制されるほか、農家段階で使用する場合は、薬剤師か獣医師より購入するか、
もしくは使用許可証の添付されているものに限られることが含まれており、畜産農
家の薬物の違法使用防止をも狙ったものである。

 保健省の実施したサンプル調査によると、食肉における使用禁止されている薬物
の残留は、徐々に減少しているとのことである。畜産農家は、薬物使用の危険性を
重視し始める一方、今後、消費者の食肉に対する安全性への関心も高まっていくも
のと思われる。


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