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EU委員会がロシア向け食糧援助を提案


【ブラッセル駐在員 井田 俊二 11月12日発】EU委員会は、11月9日の
EU外相理事会において、今後、食糧不足が見込まれているロシアに対する食糧援
助を行うことを提案した。援助物資は、穀物および食肉などで総額4億ECU(約
560億円)で、その実施は年明けになるとみられている。

 EU委員会は、11月9日のEU外相理事会において、ロシアに対する食糧援助
を行うことを提案した。ロシアでは、今年8月に発生した経済危機に伴う通貨の下
落および97年収穫量の約半分と言われている農作物の不作により、今後、食糧不
足が懸念されている。今回の動きに先立って、11月6日には合衆国がロシアに対
する食糧援助(310万トン)に合意している。

 この提案によると、援助物資は穀物155万トン、食肉25万トンおよび乳製品
5万トンで、総額4億ECU(約560億円、1ECU=140円)となっている。
品目および数量は次のとおりである。

                             (単位:万トン)
品 目 今回の援助数量 97年ロシア生産量
小麦 100 4,420
ライ麦 50
5 108
牛肉 15 230
豚肉 10 150
乳製品 5 17
(注)米の生産量は、旧ソ連邦全体の数値

 この援助数量を97年におけるEUからロシアへの輸出数量と比較してみると、
牛肉(97年の輸出量:35万4千トン)で42%、豚肉(同34万1千トン)で
29%に相当する。

 今回の援助物資の調達は、豚肉を除いた品目についてはEU介入在庫を充当し、
豚肉については市場から購入して行われるものとみられる。

 また、援助の方法および条件として、援助物資はロシアの国内市場価格で販売す
ることとし、その販売利益を用いて基金を創設する。この基金はEUおよびロシア
政府が共同管理し、生活困窮者対策に利用されることとなっている。このためEU
では、援助物資がその目的通り適正にロシアにおいて消費されること(物資の再輸
出などの禁止)について何らかの保証をロシア政府に対して要請することとしてい
る。

 この提案はEU農相理事会において大筋で合意されたが、今後、ロシア政府から
の公式な食糧援助要請を受けて、EU規則の制定に向け、今後近いうちに理事会で
提案が図られるものとみられる。なお、規則制定後には具体的な食糧支援体制を整
備する必要があることから、食糧支援の実施は年明け以降になるものとみられてい
る。

 EUにおける97年の域外向け輸出量におけるロシア向け輸出量の比率は、牛肉
が44%、豚肉が32%などで主要な輸出先となっている。このため、ロシア経済
危機による輸出機会の減少は、EUにおける農産物の市場価格の下落、在庫量の増
加といった悪影響を及ぼしている。

 EUの生産者は、食糧援助により在庫量が減少し市場価格の回復が図られるので
はないかと期待している。



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