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肉牛取引きは家畜市場が主体(豪州)


【シドニー駐在員 野村俊夫 11月12日発】豪州農業資源経済局(ABARE)
が先ごろ公表した肉牛産業の動向調査報告によると、豪州の肉牛取引きにおいては、
生産者からパッカーへの直接販売の割合が増加する傾向にあるものの、全体では依然
として家畜市場を通じた販売が主体となっていることが示された。

 豪州における肉牛取引きは、かつては家畜市場における販売が大部分を占めていた
ものの、近年では、パッカーが品質のそろった牛をより多く求めるようになっている
こともあって、生産者がパッカーと契約して肥育牛を直接販売する方法が増加する傾
向にある。

  また、パッカーへの直接販売は、と畜後の枝肉データのフィードバックが容易とな
り、生産者の長期的な経営の改善に役立つことから、政府や業界団体も、家畜市場の
重要性を認識する一方で、パッカーへの直接販売を奨励してきた。

  しかし、現状は、国内で取引きされる牛には肥育素牛などの様々なタイプの牛が含
まれていることや、相場に応じた出荷調整が可能なことなどから、家畜市場における
販売の割合は依然として高く保たれており、今回の報告(96/97年度)でも、家畜市
場における販売が全体の40%と、パッカーへの直接販売の31%を上回った。

 ちなみに、肉牛販売方法の特徴を州別に見ると、ビクトリア州やニューサウスウェ
ールズ州では家畜市場における販売が約7割を占めているのに対し、北部準州やクイ
ーンズランド州では、その割合が大幅に低くなっている。

 これは、比較的小規模な生産者が集中している南東部では、農場の近隣にある家畜
市場を手軽に利用できるのに対し、大規模な生産者が広い範囲に散在している北部で
は、移送距離が極めて長いことから、家畜市場を有効に活用できないことに起因して
いる。

 なお、北部準州では、東南アジア等への生体輸出販売に加えて他農場への移送の割
合が高くなっているが、これは、パッカーやフィードロットに近い東部地域の肥育農
場まで、素牛を長距離移送せざるを得ないためである。

 また、ほぼ平均的な飼養規模である300〜550頭の農場では74%を家畜市場
に出荷しているのに対し、同5,500頭以上の農場では5%と極めて少なくなってい
るが、これも上記と同様の理由によっている。

 このように、豪州の肉牛取引において家畜市場は、肉牛の取扱方法が保証されてい
ないとして、新たな牛肉品質保証プログラムから除外されるなどの課題を抱えている
ものの、豪州全体で見た場合には、依然として主要な取引方法として活用されている
と言えよう。

豪州の肉牛販売方法の現状(96-97年)      (単位:頭、%)
  平均
飼養頭数
家畜市場
販売
パッカー
直接販売
農場販売 生体輸出
向け販売
他農場へ
の移送等
豪州全体

739

40

31

9

9

11

VIC州

315

69

12

18

0

1

NSW州

465

71

19

8

1

1

QLD州

1,253

25

42

4

11

17

北部準州(NT)

7,326

6

10

14

32

39

資料:ABARE "Beef Industry 1998"						

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