ALIC/WEEKLY
【シンガポール駐在員 外山 高士 10月1日発】タイ政府は、中東や日本など への鶏卵の輸出拡大を検討している。輸出の多くを占める香港向けが好調である一 方、今後、新たな輸出市場の拡大に取り組むこととしているが、その背景には生産 コストの上昇で困窮する鶏卵生産農家の救済対策としての効果を期待しているため である。 タイ政府は、鶏卵の輸出市場を中東、日本、シンガポールなどへ拡大する計画を 発表した。商務省副大臣によると、現在、近隣諸国のみに輸出している鶏卵を、よ り高価格で販売でき、新しい市場となりうる国の、鶏卵の輸入規程に関する情報の 収集を指示したとのことである。 同国の殻付き鶏卵の輸出先は、香港がそのほとんどを占めており、96年では全 輸出量の99%である、約6千4百万個となっている。その他の国では、ミャンマ ーやラオスなどの近隣諸国となっている。また、日本向け輸出は、鶏卵加工品のみ で、約2千トンとなっている。 商務省によると、今年前半の鶏卵輸出は、約8千5百万個と前年を大幅に上回っ ており、その多くはやはり香港向けとなっている。また、同省ではこの増加の要因 について、これまで香港市場における競争相手国であった中国が、今年のラ・ニー ニャの影響による洪水で、生産量が減少しており、香港向け輸出価格が1.9バー ツ/個(1バーツ=3.56円)程度と、タイからの輸出価格1.5〜1.6バー ツ/個を大幅に上回っていることを挙げている。このため、今年の鶏卵輸出量は、 かなり高水準に達するものと期待されている。 一方、同国では、4月から5月にかけて、エル・ニーニョの影響により高温の日 が続き、鶏卵生産量が減少し、政府の発表する今年の生産量の予想は、当初の約94 億個から約85億個へと下方修正された。このため、バンコクでの卸売価格が上昇 し、6月は2.19バーツ/個(前年同月比36.9%高)、7月で2.08バー ツ/個(同30.3%高)と高騰した。しかしながら、9月頃より、降雨とともに 気温が下降し始めたことから、生産量も平年水準に戻り始め、卸売価格は軟調に推 移し始めている。しかし、鶏卵生産者は、昨年の通貨下落以来、上昇した飼料価格 の影響により、生産コストが上昇していたため、現在の水準より価格が下がると、 赤字経営となる農家が多くなると見込まれ、厳しい状況が予想されている。 このため、政府では今回の新たなる輸出市場への拡大や、香港向け輸出の価格を 現在の水準より上昇させる交渉を行うなど、養鶏農家の救済対策を始めたところで ある。同国養鶏農家では、これらの対策により、今後の鶏卵価格の急落が回避され ることを期待している。
元のページに戻る