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EUが中・東欧諸国農業の現状と需給見込みを報告


【ブラッセル駐在員 井田 俊二 10月 8日発】EU委員会は、この度、ポー
ランドなど中・東欧諸国10カ国における農業の現状と2003年までの主要農産
物の需給見込みに関する報告を公表した。EUへの加盟を申請している中・東欧5
カ国が加盟を果たし、単一市場が形成されることを前提とした報告となっている。 

 EU委員会は、10月2日、EU加盟を申請しているポーランド、ハンガリー、
チェコ、スロベニアおよびエストニアの5カ国とブルガリア、ラトビア、リトアニ
ア、ルーマニアおよびスロバキアを含めた中・東欧10カ国を対象として、各国の
農業の現状および2003年までの主要農産物の需給見込みに関する報告を公表し
た。この報告は、EU加盟を申請している中・東欧5カ国がEUに加盟し、200
3年以降EU単一市場と共通農業政策に組み込まれることを前提として作成されて
いる。

 現状報告によると、近年の大部分の中・東欧諸国における農業は、89/90年
以降、民営化などの構造改革の影響により生産量が大幅に減少し深刻な危機を経験
した。現在は、耕種作物部門で生産が回復局面に転じたものの、畜産部門では依然
低水準の状態にある。89年と97年の家畜の飼養頭数を比較すると、牛および羊
で特に頭数の減少が著しく約半分に減少した。豚および鶏では、頭数が30〜35
%減少したが最近頭数の回復が見られる。

 また、農業労働力について見ると、中・東欧10カ国で約1千万人(EUは750
万人)おり、農業の占める相対的な重要度は大きい。しかしながら、一人当たりの
農業生産額はEUの11%と生産性が著しく低く、農村地域における余剰農業労働
力が大きな課題であるとされている。

 一方、農業関連食品分野では、民営化の影響により、現在過剰設備と再構築の問
題に直面しているほか、EUの家畜や植物検疫の基準に適合した設備の必要性に迫
られている。

 畜産物の今後の見込みは、生乳では、飼養頭数の減少率が鈍化する一方、1頭当
たりの泌乳量が増加するため総生産量が増加する。ただし、一人当たりの消費量が
増加するため、今後生乳の余剰量は減少する。

 牛肉は、乳肉兼用種から肉専用種への転換が図られ、飼養頭数の増加およびと畜
重量の伸びにより生産量は拡大するが、消費量も増加するため自給率は均衡または
わずかに低下する。

 豚肉は、消費量の増加を上回る生産量の増加が見込まれポーランド、ハンガリー
およびブルガリアで今後ロシアなどへの輸出機会が増加する。

 鶏肉は、消費量が増加する一方で生産量の伸びが鈍化するため、全体の輸出能力
は減少する。

 なお、今後の需給見込みは次の通りである。

      (単位:生乳は百万トン、その他は千トン)
       生産量        国内消費量     需給バランス
    89年 97年 2003年  89  97  2003   89  97  2003
生乳 38.9 28.3 31.1  35.1 25.7 29.1  +3.8 +2.5 +2.0
牛肉 2056 1247 1364  1683 1229 1329  +373  +18  +35
豚肉 5489 4198 5007  4945 4032 4706  +543 +167 +301
鶏肉 1778 1599 2001  1431 1521 1936  +347  +78  +65
 



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