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豪州総選挙、農業関係者は結果を概ね歓迎


【シドニー駐在員 藤島 博康 10月8日発】豪州連邦議会上下院の同時選挙は
3日に投票を終え、自由党と国民党による現行の保守連合与党の政権維持が確実と
なった。公約とした税制改革の実現などには困難も予想されているが、農業関連団
体は、一部を除き、農産物貿易の一層の自由化を旗印とする保守連合の勝利を歓迎
している。 

 すべての議席が決定していないものの、8日午後5時現在で、下院148議席中、
自由党59、国民党15、労働党65、無所属1となり、保守連合が過半数に達す
ることは確実な情勢となった。今回の総選挙では、税率10%の消費税(GST)
導入を基軸とした税制度の見直しなど保守連合の提案した経済改革が争点となった
ことから、ハワード首相は、一連の経済改革に国民の合意が得られたとする勝利宣
言を既に行っている。
 
 しかしながら、保守連合の議席数が、前回96年選挙の自由党75、国民党18
から大きく減少する一方で、GST導入反対を訴えた労働党は前回の49議席から
大幅に回復した。また、現在でも過半数に満たない上院での保守連合の議席数はさ
らに減少し、今回の改選対象議員の任期が切れる来年7月以降は、野党の協力なし
に法案成立が困難となることから、保守連合が公約に掲げた経済改革は実現までに
大きく姿を変える可能性もある。

 一方、農業関連では、豚肉業界の反保守連合キャンペーンが注目されていた。実
質的に過去最低ともされる豚価の低迷にあえぐ肉豚生産者らは、豪州豚肉生産者協
議会(PCA)を通じ、輸入豚肉が価格低迷の主因であるとして、政府に関税やセ
ーフ・ガードの設定などを求めていたが、現政権は、安易な輸入規制は豪州の推進
する農産物貿易の自由化に悪影響を及ぼすだけだとし、輸出促進などの支援策を発
表するにとどめていた。

 これに反発を強めたPCAは、農業専門紙に、ハワード現首相、フィッシャー副
首相、アンダーソン第1次産業大臣の3人の顔写真を掲げて連合政権への投票阻止
を訴えるなど、過激なキャンペーンを実施していた。フィッシャー副首相は国民党
党首、またアンダーソン大臣は同党副党首でもあり、明らかに地方農村部を地盤と
する国民党を標的としたもので、豚肉輸入規制を公約の一つとしていた野党第1党
の労働党ばかりか、極右のワン・ネーション党までも選択肢として並べ、現政権へ
の反対票を投じるよう呼びかけていた。

 このような動きに、豪州肉牛生産協議会が、保守連合与党の貿易政策を支持する
声明を発表するなど、選挙中、農業分野では自由化と国内保護をめぐる議論が続い
ていた。

 選挙後、全国農業者連盟では、GST導入に関して前向きな姿勢を示すとともに、
今後の農業政策への期待を表明していることなどからみて、結果的に、肉豚生産者
の国内保護論は少数派だったといえる。

 世界貿易機関の次期貿易交渉に向けて、2期目となった現政権は、より一層の自
由化を求めて行くものとみられるが、現行の疾病侵入防止という検疫を理由とした、
カナダ鮭、ニュージランド産りんご、鶏肉などに対する輸入規制に対しては、その
根拠に関して輸出国サイドから非難も強く、今後、どのような解決策を打ち出して
くるのか注目される。


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