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シンガポールで唯一の山羊農場


【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 10月 8日発】シンガポールの数少ない農
業にあって、同国に唯一の山羊農場がある。96年に3人の兄弟により設立された
同農場は、現在では約500頭規模に拡大するとともに、その山羊乳が健康に良い
という口コミで評判が広まり、宅配を主にして販売を行っている。将来の飼養規模
は1,500頭が目標という。

 シンガポールの数少ない農業にあって、同国に唯一の山羊農場がある。同農場は、
96年に同国北西部に位置するリム・チュー・カンの国有地に、3人の兄弟が百万
シンガポールドル(1シンガポールドル=約80円)を投資して設立された。なお、
2ヘクタールの農地は、国から    20年契約で借り受けており、毎月の借地料は
2千シンガポールドルとなっている。わずか48頭であった山羊の飼養頭数は、9
月末時点では約500頭規模までに拡大した。これを、3兄弟を含む5人で管理運
営している。

 同農場では、毎朝搾乳する山羊をミルクパラーに移動させ、ミルカーを装着して
搾乳を開始する。1頭当たり2〜3分で搾乳が完了し2〜3リットルの乳を出す。
1日の生産量は約300リットルで、そのうち約7割は販売され、残りが子山羊に
給餌される。飼料は、豪州、マレーシアから輸入したアルファルファ、固形飼料の
みとなっている。なお、堆肥は、近隣のラン栽培農家に供与している。

 不純物のろ過後4℃に冷却保存された山羊乳は、72.5℃15秒間の低温殺菌、
ビン詰めの工程を経た後、販売に回される。販売先は、一般家庭への宅配が主で、
健康食品販売店にも一部納品している。その配送については、外部に委託している。
なお、1リットル当たりの山羊乳の生産コストは、企業秘密のため聴取できなかっ
たが、利益はわずかとのことであった。

 3兄弟の長男であるサニー・ヘイ氏は、多くの人は山羊乳が独特の臭いがすると
いう偏見で、山羊乳が持つ本来の風味を誤解していると嘆いている。山羊乳は、強
い臭いも無く、味は牛乳より薄いか若しくは同程度で、コクのあるものであった。
最近、顧客数は、山羊乳が健康に良いという口コミで増えている。そして、一度味
を覚えたら病みつきになり、1リットル8ドルもする山羊乳を喜んで購入する熱烈
なフアンも多いという。自身も毎日、健康のため大麦フレークに山羊乳を混ぜた朝
食を、健康のために欠かさず取っている。

 ところで、同氏は将来の山羊農場の開設に備え、当地で養豚業を行っていた10
年前に、山羊の飼養を試みていた。また、米国ミネソタ州の山羊農家に1カ月滞在
し、同農家の運営を学ぶとともに、さらに、ミルクの取り扱いおよび加工技術を習
得するため、ニュージーランドでも1カ月間の研修を実施した経緯がある。

 同氏の2代目の後継者は、山羊乳からヨーグルト、アイスクリーム、チーズなど
の乳製品を製造する計画を進めている。このためにも、同氏は、現在の500頭飼
養規模から1,500頭に拡大することを目指している。

 同氏は、シンガポールでも山羊農場の経営ができるというお手本を示すことを念
頭においてきたとのことである。

 一方、隣国のマレーシアにおいても、山羊乳を原料として製造した山羊ミルクせ
っけんが大当たりしているという。最近、シンガポールなどで、山羊乳が静かなブ
ームとなっている。


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