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【デンバー駐在員 本郷 秀毅 10月8日発】米国サウスダコタ州に端を発する カナダ国境沿いの5州によるカナダ産農畜産物の輸入規制問題は、米国の肉用牛生 産者団体による国際貿易委員会(ITC)へのアンチダンピング調査などの提訴へ と発展した。米加両国政府は10月8日、このような事態を打開するための緊急協 議を開催した。 11月3日に予定されている知事選挙で再選を目指すジャンクロウ米サウスダコ タ州知事は、9月16日、カナダ産の生体牛、生体豚および穀物に関する検疫措置の 強化により、カナダ産の農畜産物の輸入を規制するという措置を講じはじめた。 選挙に加え、農畜産物価格の低迷を背景として、このような動きはカナダとの国境 に隣接する他州へと広がり、ミネソタ州、ノースダコタ州、アイダホ州、モンタナ州に おいても、ほぼ同様の措置が講じられることとなった。(注:カナダ側の発表によ れば、ワイオミング州を含め合計6州。) これに対し、カナダは、このような不当な措置を即刻撤廃するよう、北米自由貿 易協定(NAFTA)および世界貿易機関(WTO)協定に基づく協議を同時に要 請するという、異例の事態へと進展した。 さらに、こうした事態の展開を受けて、米国の肉用牛生産者団体によって組織さ れた法律問題を所管する団体である牧場主−肉用牛生産者行動法律財団(R−CA LF)は、10月1日、ITCに対して、カナダおよびメキシコを対象とする合計 3つの貿易問題に関する提訴を行った。 はじめの2つは、カナダおよびメキシコからの生体牛の輸入に対するアンチダン ピング提訴である。R−CALFの主張によれば、両国から輸入される生体牛の価 格は生産コストを下回っており、ダンピング相当のペナルティを加えるべきである としている。 3つ目は、カナダの肉用牛生産関連の助成措置に対する相殺関税提訴である。R −CALFの主張によれば、中でも、カナダ小麦ボード(CWB)が米国向けの飼 料用大麦の輸出を制限することにより、カナダ国内の飼料用大麦価格を引き下げ、 カナダの肉用牛生産者に不当な優位性を与えており、これらの補助金に相当する相 殺関税を課すべきであるとしている。他方、米国の穀物生産者は、CWB米国向け に低価格での穀物輸出を制限しないことを不満として、繰り返し同様の行動をとっ ており、両生産者団体間の主張は全く矛盾したものとなっている。 このように事態が紛糾する中、両国政府は、一連の二国間貿易問題を議論する枠 組み作りのための協議を行うことを前提として、米国州政府による輸入規制措置を 撤廃する一方、カナダはNAFTAおよびWTO協定に基づく協議の要請を撤回す るという合意に達した。 本合意を受けて、両国政府は10月8日、最近の貿易問題を議論するための協議 を開催し、米国は、CWBの価格設定方法などによる生産者への利益還元、カナダ の肉用牛産業に対する支援事業、ジャガイモなどの輸出に対する制限、その他検疫 衛生などの問題について主張した模様である。
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