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【シドニー駐在員 藤島 博康 9月10日発】このほど、豪州統計局より98年 3月31日時点の肉牛飼養動向調査が発表された。これによると、豪州全体の肉牛 飼養頭数は、前年同期比0.5%減とわずかな減少にとどまったものの、これまで の雌牛のと畜水準等からすると、今後の肉牛飼養頭数は減少傾向にあるとみられて いる。 98年3月31日時点の豪州全体の肉牛飼養頭数(乳用牛を除く)は、前年同期 の2千382万2千頭をわずかに下回る2千370万6千頭となった。 全体としては、わずかな減少にとどまったものの、州別にみると、南東部のニュ ーサウスウェールズ(NSW)州やビクトリア(VIC)州で、前年同期よりそれ ぞれ5.6%、9.1%と比較的大きく減少した。これらの南東部地域では、今年 前半あたりまで、干ばつよる牧草地の悪化から、雌牛を中心に牛群の縮小が続いて いた。 これに対し、肉牛頭数全体の4割強を占めるクインズランド(QLD)州と、ノ ーザン・テリトリー(NT)の北部地域では、干ばつの影響もなく、前年同期より もそれぞれ2.8%、2.4%増加しており、南東部での減少を相殺するかたちと なった。 現在、NSW州の北部地域で洪水が相次ぐなど、昨年来の雨不足を補ってあり余 る程の降雨が続いており、夏場に向けて牧草地のコンディションが大きく改善しつ つあることから、南東部地域での肉牛頭数の縮小傾向にも歯止めがかかるものとみ られている。 しかし一方で、QLD州やNTの北部地域では、アジアの経済混乱により大幅に 減少した東南アジア向けの生体牛輸出に、一向に回復の兆しが見られないことから、 繁殖牛の整理が拡大する傾向にあるとされている。QLD州での全と畜に占める雌 牛の割合でみると、95/96(7月〜6月)年度36.0%、96/97年度 41.7%、97/98年度45.6%、98年7月から9月第一週までは46.9 %と増加し、特に今年に入ってから急激に拡大する傾向にある。 このため、肉牛飼養頭数は、今回調査を境に、80年代中盤以降、初めての減少 局面に転じたとみられている。業界団体であるミート・アンド・ライブストック・オ ーストラリアでは、短期的には、生体牛輸出の回復は見込めず、牛肉の輸出需要も 軟調傾向で推移すると見られることから、肉牛飼養頭数が拡大に向かう要因は少な いとした上で、今後99年にかけてと畜牛の供給が急減する可能性も低いと予測し ている。
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