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マレーシア養豚産業の現状と課題


【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 9月10日発】最近のマレーシアの養豚は、
農家戸数、飼養頭数および生産数量が減少傾向で推移しているものの、農家販売価
格は、96年および97年の2カ年好調に推移した。しかし、今後強化される環境
規制は、同国の養豚産業の拡大にとって大きな課題になるものとみられている。

 マレーシアの養豚は、西マレーシアに集中しているが、その農家戸数は1,909戸、
飼養頭数は244万頭で、一戸当たり平均1,279頭(97年、以下同じ。)を飼
養している。日本の同平均739頭(98年2月時点)と比較しても、かなり規模拡
大が進んでいる。しかし、農家戸数は毎年減少し、また、飼養頭数においても、94
年の249万頭をピークに減少傾向で推移している。

 飼養規模別に農家戸数をみると、百頭から5百頭未満規模の農家戸数は、全戸数の
約37%、5百頭から1千頭未満の農家戸数は同約25%となり、千頭未満では、同
約7割を占めるに至っている。しかし、農家の規模別に飼養頭数をみると、千頭規模
未満の農家の飼養頭数は、全頭数のわずか24%であるが、全農家戸数の約3割を占
める1千頭規模以上の農家の飼養頭数は、同76%となっている。特に、全農家戸数
のわずか4%を占める5千頭規模以上の農家では、全飼養頭数の3分の1を占めてい
る。

 需給においては、生産量が94年の   416万頭をピークに、毎年わずかづつ減少
し403万頭となった。

 輸出量は前年比5%減の103万頭で、そのほとんどを生体豚でシンガポールに出
荷された。ちなみに、10年前は、シンガポールと国境を接しているジョホール州か
らの輸出頭数が全体の約4割を占めていたが、マレーシアを縦断する高速道路の開通
などにより、タイと隣接する北部ペラ州からの輸出頭数が倍増し同約4割を占め、ジ
ョホール州からの輸出頭数は逆に同約2割に低下した。

 輸入量(内臓を含む。)はわずか2千5百トンで、中国、カナダなどが主な輸出国
であった。国内消費量は3百万頭、部分肉換算で18万トンとなった。宗教の制約を
受けない者による一人当たりの年間消費量は、最近減少傾向で推移したものの97年
は96年より0.1s増加し30.7sとなった。この結果、97年の豚肉自給率は
134%となった。

 また、ここ10年間の豚の農家販売価格は、96年の4.1RM/s(1RM=約
35円)が最高で、97年は3.9RM/sと好調に推移した。なお、最近の同価格
は、通貨危機の影響による多くの養豚農家の離脱、豚のへい死率の増加および子取り
用めす豚の受胎率の低下などにより出荷される成豚が減少し、大幅に上昇している。

 一方、2000年から、豚舎から排出される汚水の生化学的酸素要求量が50ppm
以下に規制されるなど水質汚濁防止に関する環境規制が厳しくなる。

 このため、今後強化される環境規制は、同国の養豚産業の拡大にとって大きな課題
になるものとみられている。




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