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【デンバー駐在員 藤野 哲也 9月24日発】米国サウスダコタ州に端を発する カナダ産の生体牛、生体豚および穀物に対する検疫強化措置の実施により、カナダ からのこれらの産品の輸出が妨害されるという状況になっている。これに対しカナ ダは、米国と会合を持ったものの不調に終わったため、WTOなどに基づく協議を 要請した。
ジャンクロウ米国サウスダコタ州知事は、カナダが穀物輸入に際して、必要以上 の検査を要求するとともに、生体牛のダンピング輸出を行っていることへの対抗措 置であるとして、カナダ産の生体牛、生体豚および穀物に対する検疫強化措置を実 施した。
家畜については、カナダで認可されているが、米国では認可されていないとする 6種類の動物用医薬品の残留がないことを、また、小麦については、カーナル・バ ント(黒穂病)の病害がなく、かつ、カラスムギが混入されていないことをそれぞ れカナダ政府などが証明する必要があるとしている。
しかしながら、カナダ政府などによるこのような証明書の発行が行われていない ため、9月16日以降、カナダからこれら産品を輸送するトラックについては、事 実上、同州を通過できないという状況になっている。加えて、カナダと国境を接し、 サウスダコタ州の北側に隣接するノースダコタ州は、サウスダコタ州の措置を支持 するとともに、カナダからのトラックに係る検査を通常よりも強化している。
これに対し、カナダのバンクリフ農業大臣は、カナダ産農産物は米連邦規則に合 致しているとして、サウスダコタおよびノースダコタ州を非難する声明を発表する とともに、今回の措置は、農産物の安全性や品質、衛生上の問題ではなく、単に今 秋に行われる州知事選対策とし、政治的に利用されているに過ぎないとして、これ を厳しく批判した。
今回の措置により、カナダから生体豚などを輸入しているサウスダコタ州などに 所在するパッカーは、少なからぬ影響を受けるものと見込まれている。一方、サウ スダコタ州が、米国で認可されていないとしている動物用医薬品の中には、既に食 品医薬品局(FDA)が認可しているものが含まれていることや、事実上、ペット 用にしか使用されていない医薬品が含まれていることが指摘されており、今回の措 置の正当性に対して、米国側からも疑問を呈する声が上がっている。
一方、アジア経済危機に伴う輸出不振などにより米国産農産物の価格が低迷して いることから、生産者の不満は大きくなっており、今回の検疫強化策に呼応して、 ノースダコタ州やモンタナ州では、生産者によるカナダ産農産物の輸入に反対する デモが行われた。また、カナダに隣接する両州に加え、ミネソタ州でも、程度の差 はあれ、同様の措置が導入されることとなった。さらに、アイダホ州などでも導入 の検討がなされている。
このため、9月24日、カナダ政府と米国政府がニューヨークで会合を持ったも のの、カナダ政府は、満足の行く回答が得られなかったとして、同日、今回の措置 を即時撤廃するよう、北米自由貿易協定(NAFTA)および世界貿易機関(WTO) に基づく貿易紛争解決のための協議を要請することを明らかにした。
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