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【シンガポール駐在員 外山 高士 4月15日発】 タイ政府は、今年度の畜産 振興対策を発表したが、酪農を中心とした新たな畜産基地の設置など、酪農振興に 重点を置いたものとなっている。新たな雇用機会の創出など、経済の立て直し政策 の一環として、その効果が期待されている。 タイ政府は、99年度から3ヵ年の畜産振興対策を発表した。これは、特に同国 内での需要が高まっている牛乳の生産に重点を置いた酪農振興を中心としたものと なっている。 同国の酪農業は、97年の通貨危機までの急速な経済発展とともに拡大傾向で推 移してきた。生乳生産量で見ると、92年の22万3千トンから97年には41万 8千トンへと5年間で約2倍にもなっていた。また、飼養頭数を見ても、92年の 22万2千頭から97年の30万3千頭へと順調に増頭傾向で推移してきた。 消費量は92年の22万3千トンから96年には154万1千トンへと急速に拡 大したものの、97年は通貨危機が起こったことから107万2千トンと大幅に減 少しており、1人当たり消費量も、96年の25.6sから97年の17.6sへ と大幅な減少となっていた。 今回の畜産振興対策では、豚や鶏のような比較的繁殖周期の短い畜種については、 輸出の拡大などを目標とし、特に豚については口蹄疫の対策など、日本を含めた新 たな輸出市場への対応を行うこととしている。一方、乳牛や水牛などの繁殖周期の 長いものについては、生産拡大対策などの国内生産に主眼をおくこととしている。 この中には、同国東部地域の口蹄疫清浄化地区に、新たな畜産基地を設置し、1,6 00戸分の新規酪農家用地や国際水準に合致したと畜場の整備などの計画が含まれ ている。また、この畜産基地の設置により、毎年8千頭の搾乳牛の増加を期待して おり、今後も高い需要の伸びが見込まれている牛乳について、現在30%程度の低 い自給率を向上させたいとしている。 同国政府によると、今回の経済危機により国内には200万人以上の失業者がお り、彼らが東部地域の新たな畜産基地で働くことが可能となることから、多くの労 働者が酪農業に就労するものとみている。また、今回の計画では、生産資材の中で 最も輸入金額が大きく、年間50億バーツ(1バーツ=3.3円)以上とも言われ ている動物用医薬品についても、国内での生産に切り替えることとしており、製薬 部門も含めて、雇用拡大に期待が持たれている。 これらの対策には、現時点では十分な予算措置が決定されていないものの、同国 における通貨危機による経済停滞の打開策の1つとして、その効果が期待されてい る。
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