ALIC/WEEKLY
【デンバー駐在員 藤野 哲也 4月21日発】豚肉チェックオフ制度の反対団体 は、肉豚生産者などからチェックオフ制度の全体投票に必要な署名数が得られたと 発表した。これにより、全体投票が今秋にも実施されることとなる。一方、牛肉チ ェックオフ制度の全体投票については、実施に必要な署名数を集めることが困難な 状況にある。 牛肉および豚肉のチェックオフ制度は、法律に基づき生産者などから畜産物の取 引時に賦課金を徴収し、これを原資として、畜産物の販売促進、需要開発および調 査研究活動を行うものである。同制度は、86年に創設され、その賦課金は現在、 牛肉で生体1頭当たり1ドル、豚肉で生体価格100ドル当たり45セントとなっ ている。 98年4月、豚肉チェックオフ制度に反対するアイオワ、ミネソタおよびミズー リ州の農業団体などが中心となって、チェックオフ制度廃止を呼びかける「家族経 営キャンペーン」が開始された。同キャンペーンでは、中小規模の伝統的な家族経 営から拠出されたチェックオフ資金が、大規模生産者やパッカーを支持するための 事業に利用されていると非難していた。 そして、キャンペーン主催団体は99年4月15日、制度存続に係る全体投票に 必要な生産者および輸入業者の15%以上に当たる16,500の署名を集めたこと を発表した。これらの署名は、米農務省(USDA)へ5月中に提出される予定で あるとしている。 今後、USDAによる審査で、全体投票に必要な有効署名数に達していることが 確認されれば、今秋にもチェックオフ制度に係る全体投票が行われることとなる。 仮に全体投票が実現すれば、当初から法律の規定に基づき、実施が義務付けられて いた88年9月以来、2回目のこととなる。なお、88年の場合には、生産者など からの支持率は78%という高いものであった。 チェックオフ制度の運営機関であるポークボードおよび事業の実施機関である全 国豚肉生産者協議会(NPPC)は、全体投票が行われることについて、歓迎の意 向を示す一方で、USDAに署名の有効性を厳正に審査することを求めるとのコメ ントを発表している。 また、NPPCは、今回の結果について、環境規制の強化、大規模企業経営と中 小規模経営体との対立や豚肉価格の低迷など、現在養豚産業が置かれている厳しい 状況が追い風になったものと分析している。ただし、ポークボードの最近の調査結 果では、チェックオフ制度存続のために必要な過半数の生産者などからの理解は得 られているとの見解を示している。 一方、豚肉チェックオフ制度と時をほぼ同じくして始められた牛肉チェックオフ 制度反対キャンペーンについては、全体投票に必要な10%以上に当たる約10万 8千人の生産者からの署名を集めることが困難な状況となっている。このことから、 キャンペーンを実施している畜産取引協会(LMA)は、署名活動期限を5月15 日から、さらに6ヵ月延長するようUSDAに求めているが、現段階では、全体投 票の実現は難しいものと見込まれている。 このような状況の下、ビーフボードでは、チェックオフ制度のより効率的な運用 などについての助言を200以上の牛肉および酪農団体などに求めるなど、その改 善策を模索し始めている。
元のページに戻る