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【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 8月26日発】アルゼンチンの養豚は、 穀物生産者にとって副業的な存在で、従来から生産技術の導入に消極的で、利益率 も低い。しかし最近、豊富で安価な穀物を生かし、飼料効率の向上や品種改良の技 術を取り入れ、養豚産業を底上げする取り組みが見られる。 アルゼンチンでは健康志向を反映し、近年豚肉、鶏肉の消費が伸び、年間1人当 たりの豚肉消費量(主に加工品で消費)は現在7〜9kgと推定されている。 飼養頭数は、78年に400万頭だったが88年に260万頭に減少。現在約2 20万頭である。ブエノスアイレス、コルドバ、サンタフェの3州で総頭数の75 %を占める。 生産された豚は一般に市場を通らず、アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SEN ASA)認定の食肉加工施設またはと畜施設(43ヵ所)に直接出荷され、処理さ れた枝肉が加工専門の工場(150ヵ所)に回る。その他相当数が地方の小規模と 畜場や肉専門店で処理され、統計には出ない。価格の透明性を図るため、農牧水産 食糧庁は豚に関する価格情報システム(SIPP)を作り、食肉加工施設の取引頭 数、価格などの情報を定期的に公表している。 食肉加工業者の何社かは、枝肉の特定部位の赤肉割合が44%のものを基準価格 とし、入荷した豚の赤肉割合に応じて生産者に対価を支払っている。今年に入り基 準価格は1.03〜1.05ドル(118〜121円:1ドル=115円)/kg (前年同期比20〜24%減)で推移している。99年5月の平均生体価格は0. 92ドル(106ドル)/kg(現金決裁だと0.75ドル(86円)/kgに値 引きされる)で、アルゼンチンでは豚の価格が牛肉より少し高い。 98年のと畜頭数は、178万頭(前年比20%増)で8割近くが去勢豚と未経 産豚。99年のと畜頭数、枝肉生産量はそれぞれ210万頭、19万トンと推定さ れている。なお、99年(1〜4月)のと畜頭数は60万頭(前年同期比24%増) で枝肉生産量は6万3千トン。 豚肉(主に加工用の原料肉)と加工品の輸入量は90年から増加し、98年の輸 入量と輸入額(輸出時点のFOB価格。以下同じ。)はそれぞれ7万1千トン(前 年比24%増)、1億4千3百万ドル(164億円;前年比1.6%減)で、国内 消費の約3割に相当する。主な輸入先はブラジル(64%)、チリ(15%)、デ ンマーク(6%)である。99年(1〜4月)の輸入量、輸入額はそれぞれ2万2 千トン(前年同期比4%増)、4,150万ドル(48億円;前年同期比11%減) で、ブラジル、チリからの輸入量が減少し、その分デンマークからの輸入が著しく 増えたのが特徴である。 98年の豚肉とその加工品の輸出量、輸出額(FOBベース)はそれぞれ2千ト ン、215万ドル(2億5千万円)。主な輸出先はボリビア(76%)とブラジル (12%)で、ボリビアへの輸出の大半は豚脂・油である。
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