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【ブラッセル駐在員 井田 俊二 8月26日発】EU統計局(EUROSTAT)は、 98年のEUにおける農業労働力を公表した。 98年の農業労働力は、672万9千人(フルタイム労働に換算)で前年を1. 7%(11万5千人)下回った。この結果、98年のEU産業全体に占める農業労 働力の比率は、97年の4.6%からさらに減少するものとみられる。EUの農業 労働力は、長期間にわたり一貫して減少傾向が続いている。しかしながら、減少率 は92年および93年の実績(前年比−5%程度)と比較して最近5年間は縮小傾 向にある。 EU(15ヵ国)における農業労働力の推移は次の通りである。
(単位:千人)
79年 |
89年 |
98年 |
|
農業労働力 |
12,433 |
8,885 |
6,729 |
(家族労働) |
9,716 |
7,040 |
5,023 |
(非家族労働) |
2,727 |
1,846 |
1,706 |
(注)89年以前と98年の数値は、ドイツにおける
対象地域が異なるため連続しない。
国別では、イタリア(163万9千人)、スペイン(104万4千人)およびフ
ランス(98万1千人)3ヵ国で全体の54%を占めている。また増減は、ドイツ
(前年比−4.1%)をはじめ13ヵ国で減少する一方、スペイン(同+1.2%)
およびオランダ(同+1.3%)で増加した。この2ヵ国で増加した要因は、野菜、
かんきつ果樹、オリーブの豊作(スペイン)および園芸作物の拡大(オランダ)に
より雇用労働力需要が増加したためである。
労働力の種類別では、家族労働力が主体で全体の約75%を占めている。国別の
家族労働力の割合は、フィンランドで94%と最も高く、イギリスで65%と最も
低い。98年には、家族労働力の割合が減少(前年比−2.5%)する一方、非家
族労働力が増加(同+0.8%)した。これは、小規模層を中心に家族労働力不足
を雇用労働力で補う傾向がみられること、また、家族経営の担い手である高齢者に
対する早期離農促進や女性労働力の他産業への流出が進んだことなどが要因である。
非家族労働力は、作物の収穫量等で大きく変動するが、長期的に見て農業労働力の
構造が家族から非家族に徐々に移行してきている。
経営分野別労働力(95年)の割合を見ると、酪農が最も大きく全体の13.4
%を占めている。また、1農家当たりの労働力は、園芸作物(2.7人)が最も大
きく酪農(1.7人)が続いている。
98年の1人当たりの生産性は、農業労働力が減少する一方、農産物生産量が1.
5%増加した結果向上した。また、長期的(81年と97年の比較)に見ると、ほ
ぼすべての加盟国で著しい生産性の向上がみられた。これは、技術革新による集約
的な農業が進む一方で、農業労働力の他産業への流出が進んだためとみられる。
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