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【シドニー駐在員 野村 俊夫 8月26日発】豪州国営放送(ABC)によると、 8月23日、ニューサウスウェールズ(NSW)州シドニー市の西方約30kmに 位置するスコーフィールドの養鶏場で、ニューカッスル病(ND)の発生が確認さ れた。このため、同養鶏場の約8千羽の鶏が直ちに廃棄処分された。 現在、検疫当局が農場周辺を封鎖してNDの拡散を食い止める努力をしているが、 必要な防疫体制を構築するには約3週間かかるとされており、今後の発生動向が注 視されている。 豪州では、1930年代にビクトリア州で2例の発生が報告されて以来、長年に わたってNDが発生していなかった。しかし、昨年来、ブラックタウン(昨年9月、 約9万羽を処分)、マングローブマウンテン(本年4月、約190万羽を処分)、 そして今回と、いずれもNSW州内で1年間に3回もNDが発生したことになる。 このうち、マングローブマウンテンでは、多数の生産者が壊滅的な損害を被った ため、現在もなお救済措置が実施されている。連邦政府は、同地域を「特別被災地 域」に指定することは却下したものの、総額850万豪ドル(約6億円:1豪ドル =71円)の生産者支援パッケージを決定したほか、今月24日には「家族農場再 建計画」に基づく1年間の所得保証の実施と、ND再発防止に向けた1千万豪ドル (約7億円)の研究対策費の支出を発表したばかりであった。 また、マングローブマウンテンのND発生以来、約5ヵ月にわたって同地域のN D根絶対策を指揮してきた検疫コントロールセンターも、ようやくその役目を終え、 同じく24日に閉鎖されたばかりであった。 この間、豪州検疫検査局(AQIS)を中心とする検疫関係者は、マングローブ マウンテンのND根絶に2千万豪ドル(約14億円)もの対策費が使われた事実を 重く見て、仮にNDが再発生した場合には、従来のND根絶政策からワクチンの接 種へと、基本対策を転換することに原則的に合意していた。 こうした中で、今回のND発生が報じられたことから、報道翌日の24日には各 州の検疫行政関係者による緊急対策会議が開催され、直ちにワクチンの接種に踏み 切ることが確認された。 現在、今回の発生農場を中心に半径3km以内の地域を対象としてワクチン接種 を行い、これによってNDの拡大を抑制する対策が講じられつつある。 一方、豪州はNDなどの侵入を防止するという理由で鶏や鶏肉の輸入に厳しい検 疫条件を課しており、輸出国との貿易摩擦の一因ともなっているため、今回の基本 防疫対策の転換は対外的な論議を呼ぶ可能性もあり、その面からも今後の動向が注 目されている。
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