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【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 12月9日発】アルゼンチンの代表的な 畜産情報誌“Informe ganadero”(畜産情報)の編集長イリアルテ氏の見たアルゼ ンチンの牛肉の輸出競争力、食肉処理加工業者、フィードロット由来の若齢牛肉市 場などの現状は次の通り。 (牛肉輸出の可能性について) 今、アルゼンチンの牛肉に十分な価格競争力はない。食肉処理加工業者の経営状 況が芳しくないのも不安材料だ。また、内臓、皮、牛脂などの副産物価格がこの1 年半で40%も下がり、業界全体で3億ドル(315億円:1ドル=105円)の 収入減になった。さらに、チリ向けの牛肉および副産物輸出価格が下がっている。 輸出量は、枝肉ベースで毎月2万6千トンから2万7千トンで安定的に推移して いるので、輸出量の少なかった98年と比べても99年の輸出量はそれほど伸びな いと思う。 生産者は、国内経済が上向くことだけが頼みの綱で、不況が続けば経営改善の見 込みはない。残念ながら、国際市場に明るい見通しは何もない。唯一日本への牛肉 輸出が期待されるが、それまでにかなりの時間がかかるだろう。 (輸出向けの生体牛市場の透明性について) 輸出向けの生体牛市場は、年間約150万頭の去勢牛をと畜して得られた牛肉の 量に匹敵する。この市場は、適正に機能しているとは思えない。その理由は、@距 離の問題で、生産者は自ら出荷したい食肉処理加工業者を選べない。彼らは他の業 者と契約したくても近場の業者に出荷せざるを得ない。A食肉処理加工業者の経営 状況は芳しくなく、その財務状況は透明性に欠ける。B売り手(生産者)は多いが 買い手(食肉処理加工業者)は少ない市場で、競争に乏しく、本来市場が持つ機能 が最大限に発揮されていない。 (フィードロット肥育由来の若齢牛肉市場について) この市場もゆがみがある。毎月10万頭がと畜され、需要の3割は3つの大手ス ーパーチェーンが握り、市場を独占し価格を決めている。スーパーが必要としてい る以上に生産者が契約を望むので、スーパーは生産者との庭先取引で自由に価格を 決め、足らない分だけリニエルス家畜市場で購入している。一方、庭先取引に比べ、 需要の落ちたリニエルス家畜市場では、生体価格が下落している。 恐らく、リニエルス家畜市場に上場される去勢牛の生体価格とフィードロット由 来の若齢去勢牛の庭先取引との間に歪みが生じるだろう。 (今後の若齢牛肉の供給について) 価格が下落しても、フィードロット経営者の多くは食肉処理加工業者やスーパー とインテグレーションを形成し、フィードロット経営での損失をカバーできるだけ の腕力をつけるだろうから、将来的に穀物も牛肉に変えていくだろう(豊富な穀物 を武器に牛肉生産に力を注ぐということ)。フィードロット経営での赤字は、その 後の流通過程で回復できる。今後とも、若齢牛肉の供給が途絶えることはないと思 う。
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