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【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 12月9日発】最近タイでは、供給過剰など のため、鶏および豚の農家販売価格ならびに卸売価格が下落している。 ブロイラーの農家販売価格(生きた鶏1s当たり)は、98年が前年比18.5 %増の生産量であったにもかかわらず、輸出が好調に推移したことなどから、同1 7.1%高の30.5バーツ(1バーツ=約2.8円)となり過去最高を記録した。 また、99年1〜7月までの同価格は、輸出の伸び悩みが見られたものの、1〜6 月までの生産量が前年同月を下回るものであったため、30バーツ前後で安定的に 推移した。しかし、7月および8月の生産量が前年同月比3%を超えたことなどか ら一転して供給過剰となり、8月以降の同価格は、8月が23.4バーツに、9月 (週速報値の平均:以下同じ。)が24.3バーツ、10月(第2週までの平均値 :以下同じ。)が22.6バーツに急落した。 また、バンコク市場におけるブロイラーの卸売価格(生きた鶏1s当たり)にお いても、農家販売価格と連動した下落が見られている。8月の同価格は、前年同月 比28.8%安となる25.3バーツに、9月が25.6バーツ、10月が24. 0バーツと下落している。さらに、ピーク時に13 バーツであったひなの価格( 1羽当たり)も8月以降下落が続き、10月は3.5バーツに急落している。 一方、経済の停滞による需要の低迷で下落していた、生体重が100sを超える 豚の農家販売価格(1s当たり、全国平均価格)およびバンコク市場における同卸 売価格(生体)は、99年5月にはそれぞれ48.2バーツおよび49.3バーツ となるピークに達していた。しかし、6月以降下落を始め、9月には農家販売価格 が39.1バーツ、卸売価格が40.4バーツ、10月にはそれぞれ34.7バー ツおよび36.8バーツに急落した。 また、ピーク時に1,500バーツであったチャロン・ポカパン(CP)が販売 する子豚の価格は、10月には半値以下の600バーツに落ち込んでいる。 タイの最近の鶏肉輸出は、98年が大幅に拡大したものの、99年はし烈な輸出 競争により、輸出価格が大幅に下落するとともに数量の伸び悩みが見られている。 輸出が減少した部分は国内に向けられ、供給は過剰になると見込まれていた。また、 豚肉は、経済回復の効果が見られるものの鶏肉と比べ依然として割高感があること、 衛生問題などで消費者が敬遠していることなどにより消費の回復は見られず、当分 の間、低価格が続くものと見込まれていた。 このような中、政府の閣僚などが委員となっている農家援助委員会では、これら の食肉の価格回復を図るため、9月末に開催した委員会で、市場から食肉を隔離す るための経費の支出を決定した。なお、ブロイラーについては、卸売価格を回復さ せるために、養鶏振興協会などが99年10月から翌年9月までの間、輸出向けブ ロイラー3,500トンを市場から隔離保管するために要する経費として、3億バ ーツが予算化されている。また、豚についても、卸売価格を回復させるために、関 連業者が実施する保管に要する経費などとして、2億2千5百万バーツが予算化さ れている。 業界では、食肉消費が回復するまでのつなぎの緊急策として、効果を期待してい る。
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