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【ブエノスアイレス 浅木 仁志 7月1日発】 アルゼンチンでは、98年の国内 牛肉価格の高騰の影響で、同年の牛肉輸出は数量、金額ベースとも前年を大 きく下回った(それぞれ前年比35%、24%減)。同国農牧水産食糧庁で は、国内価格が平均水準に戻るなどの理由から、99年の輸出量は約35万 トンと推測している。 アルゼンチンの98年の牛肉輸出量(枝肉ベース)は27万8千トンで過去 12年間で最低水準であった(97年は43万7千トン)。過去のすう勢を見 ると、牛肉の輸出量は国際価格ではなく国内価格の影響を受けており、98年 の輸出量の激減は国内価格の高騰に起因している。 98年の輸出先シェア(重量ベース)を見ると、EUへ41%、メルコスル (南米南部共同市場)域内へ4%、その他が55%(うち米国向けが20%) となっている。メルコスル域外の南米ではチリへの輸出が顕著で全体の17% (金額ベースで14%)を占めている。97年のチリへの輸出は約20%を占 めていたが、98年はアルゼンチンからの輸出価格が高かったため、チリの市 場にニュージーランドとウルグアイが進出したことが影響している。 EU向けの中ではドイツが最も多く、全体の17%(金額ベースで34%) を占めている。特に牛海綿状脳症(BSE)問題が起こってからはアルゼンチ ンビーフへの信頼が高まったといえる。EUはアルゼンチンに高級牛肉枠(ヒ ルトン枠)を認めており、その量は年間2万8千トンで、期間中(97年7月 1日〜98年6月30日)の枠は全量満たされた。ヒルトン枠牛肉の平均価格 は7.5ドル/kg(900円/kg:1ドル=120円)であったが、アルゼンチ ンの輸出が激減した98年は10ドル /kg(1,200円/kg)に跳ね上が った。 米国は97年以降アルゼンチンに2万トンの枠を与えているが、98年は 国内価格の高騰の影響により約6千トンしか枠を満たせなかった。 国ごとの輸出量が軒並み落ちた98年だったが、カナダ向けは好調で、 3千5百トン(前年比32%増)であった。 同国農牧水産食糧庁では、今後、牛肉の国内価格が平均水準に戻ること、 2万トンの米国枠のうち、4月時点で既に8千5百トンを消化している進 ちょく状況などから、99年の牛肉輸出量は前年をかなり上回るとしてい るが、アルゼンチンの国内消費は堅調であり、コンビーフ(塩蔵牛肉)、 冷凍牛肉などの低価格牛肉については、競争力のあるブラジルと競合する ことなどから、99年の輸出量は枝肉ベースで約35万トンと推測してい る。
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