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アルゼンチン農業団体による抗議の動き



【ブエノスアイレス 玉井 明雄 7月7日発】アルゼンチンの4農業団体は、農産物
市況の低迷、ブラジルの通貨切り下げなどの影響による農家経営の大幅な収益性
の低下を背景に、新たに適用された税金などに抗議し、99年4月19日から2
1日、ストライキを実施した。

  農業団体が改正を求めた新税は、98年12月に可決された税法により適用さ
れた推定最小所得税および金融機関による融資の金利に対し15%が課税される
ものである。推定最小所得税は、課税対象となる資産が合計20万ペソ(約2,
400万円:1ペソ=120円)を超える場合に、資産の合計額に対し1%が課
税される。新税の改正に加え、農業団体は、輸出業者に対する付加価値税(IV
A)の還付の迅速化、原皮および油糧種子に課せられる3.5%の輸出税の撤廃
を求めた。そのほか、金融機関による融資の見直しおよび返済期間の延長、差し
押さえとなった担保物件の競売停止、燃料や高速通行料金などのサービス料金の
値下げを訴えている。

  一方、政府側は、6月3日に行われた内閣会議終了後のロドリゲス首相による
記者会見で、メルコスル域外からの豚肉および乳製品の輸入関税の引き上げ、国
立銀行により融資を受け、差し押さえとなった担保物件の180日間の競売停止、
農薬や肥料等の購入時における付加価値税の5%の切り下げ、輸出業者に対する
付加価値税の 20日以内の還付、豚のと畜税6ペソ(約720円)のカットなど
を対応策として発表している。

  しかし、新税の改正などについては、政府側から対応策が示されず、6月6日
から9日にかけて、大土地所有者を会員とするアルゼンチン農牧協会(SRA)
を除く3農業団体がストライキを実施した。

  これら2度にわたるストライキにおいて、農業者側は農産物の出荷停止を行っ
たが、農産物の加工処理工場などは、あらかじめ在庫を積み増しするなどの措置
を講じていたことから、市場の混乱には至らなかった。

  6月末には、4農業団体のうち中小の農業経営者を主たる会員とする農協連合
(CONINAGRO)およびアルゼンチン農牧連合会(FAA)の2団体が、
7月21日にブエノスアイレス市内において抗議のデモ行進を実施すると発表し
た。

  こうした中、7月6日に行われた政府の各代表と4農業団体における会議後の
記者会見で、与党の代表ロヘロ議員は、推定最小所得税の課税対象額の下限を2
0万ペソから40万ペソに引き上げること、金融機関による融資の金利に対し課
税される税金に制限を設けることなどを国会で審議すると述べた。

  これを受け、FAAの代表は、政府が徐々に対応策を実施しているものの、7
月21日の抗議デモ取りやめを決定するには、まだ早急である旨発言している。
 

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