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【シンガポール 伊藤 憲一 7月8日発】97年9月以前、1s当たり40バーツ (1バーツ=約3.4円)前後で推移していた豚の農家販売価格 (生体100s、 全国平均)は、同年10月以降、通貨の下落の影響を受けて低落し、98年1月に は30バーツを割る底値となった。また、97年8月以前、1頭当たり1千バーツ を超えていたシャラン・ポカパン(CP)が販売する子豚価格は、98年1月には 250バーツに急落し最悪の状況となった。 このような厳しい状況下で、97年末から98年前半にかけて、多くの養豚農家 が資金繰りおよび採算の悪化などで離農もしくは規模を縮小した影響から、豚の生 産頭数が減少した状況が続いている。 このため、98年11月に1千バーツへと回復していたCPの子豚価格は、その 後も上昇を続け、99年4月には約1千5百バーツに達し、近年にない高値となっ た。また、98年12月に40バーツまで戻っていた農家販売価格も、バンコク近 郊のラーチャブリ、ナコンパトムおよびチャチュンサオの各県において上昇を続け、 今年6月には50バーツに達している。 養豚業界では、これらの価格の上昇は需要の高まりによるものではなく、生産頭 数の減少が要因とみており、経済が回復基調にあるものの、依然として消費は低迷 した状態が続いているとしている。また、隣国マレーシアでニパ・ウイルスに感染し た豚の恐怖は、不振が続いていたタイの豚肉消費に追い打ちをかけたとしている。 なお、タイで1日当たり約1万1千頭とみられる豚の消費頭数は、これらの影響を 受け、通貨の下落以前に比べ、約3〜4割減少したものとしている。 しかし、今年1月に1s当たり約51バーツであったバンコク市場における豚肉 卸売価格は、消費の不振にもかかわらず出回り量の不足により、4月末には約57 バーツまで上昇している。 一方、タイ政府は、これまで豚肉価格の上昇を抑えるため、農家販売価格の上限 を45バーツとする行政指導価格を定め監視してきた。しかし、同業界では、通貨 の下落により養豚農家がこれまで被った痛みの大きさを政府が十分に理解している ため、同価格が行政指導価格を超えているにもかかわらず、政府の指導を受けてい ないとしている。また、同業界は、過去に実施した生体豚の輸入が、行政指導価格 の下で農家販売価格の下落を誘発し、養豚農家に混乱を引き起こしたことを政府が 十分に認識しているため、輸入に踏み切れないものとみている。 なお、今後の豚肉消費については、好調な鶏肉消費の影響も受け、回復するまで にはかなりの期間を要するものとみられている。このため、養豚農家では、生産性 の高い品種の導入などにより、生産コストの削減などに努めるとしている。また、 子取り雌豚の大幅な増頭が見られない状況下にあって、豚の不足が2000年半ば まで続くものとみられるため、これらの価格は、今後も高値で推移するものと予測 されている。
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