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【デンバー 藤野 哲也 7月8日発】 米国の肉用牛生産者団体の1つである 牧場主―肉用牛生産者行動法律財団(R−CALF)は98年10月、米国際 貿易委員会(ITC)に対して、@カナダからの 生体牛の輸入に対するアンチ ダンピング、Aカナダの肉用牛生産関連の助成措置に対する相殺関税、Bメキ シコからの生体牛の輸入に対するアンチダンピングの計3つの貿易問題に関す る提訴を行った。 これに対して、米国最大の肉用牛生産者団体である全国肉用牛生産者・牛肉 協会(NCBA)は当初、自由貿易推進などの観点から、これらすべての提訴 を支持しないことを決定したが、後に態度を変化させ、カナダに対する相殺関 税については「支持」、メキシコのアンチダンピングについては「不支持」、 カナダのアンチダンピングについては「中立」の立場を取ることを表明した。 ITCは1月19日、R−CALFからの提訴について、カナダからの生体 牛が不当に安い価格で輸入されているため、米国肉用牛産業に被害をもたらし ていると認める仮決定を下した。一方、メキシコからの生体牛の輸入に対する アンチダンピング提訴については、その事実は認められないとして、これを却 下した。 米商務省(DOC)は、ITCの決定を受けて調査を開始し、7月1日、国内 にカナダの生体牛がダンピング輸出されているとの調査結果を発表した。このた め、カナダからの生体牛(種畜を除く。)輸入については、7月中旬からダンピ ング防止関税が暫定的に課せられることとなった。仮関税率は、カナダの肉用牛 輸出企業によって異なるが、大部分の企業には4. 73%が適用されることとな っている。R−CALFの試算によれば、肥育牛(去勢牛)1頭当たりに換算す ると、ダンピング防止関税は30〜55ドル(約3,600〜6,700円:1 ドル=121円)になるものとしている。 ところで、DOCは、9月13日までに今回の提訴に関する最終決定を下す予定 となっている。仮に、DOCが最終決定においても、今回と同様に生体牛はダンピ ング輸出されていると認定し、さらに、ITCが、カナダからの生体牛輸入は米国 肉牛産業に損害を与えていると決定を下した場合には、ダンピング防止関税が正式 に課せられることとなる。 カナダ肉用牛協会(CCA)は、今回の仮決定に対して、強い失望感を表明する とともに、ITCの最終決定が、カナダ側の主張を受け入れたものになると信じて いるとのコメントを発表した。また、CCAは、カナダ政府に対して、世界貿易機 関(WTO)協定のアンチダンピング規則の改正などを協議するよう要望した。し かし、今回の仮決定により、カナダにおける生体牛価格の下落が懸念されている。 なお、相殺関税についての提訴に係るDOCの最終決定も9月13日までに下さ れることとなっているが、関係者の見方では、相殺関税については、見送られる公 算が強いとされている。
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