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【デンバー 本郷 秀毅 7月13日発】 世界貿易機関(WTO)仲裁パネルは 7月12日、EUのホルモン投与牛肉輸入禁止措置による米国およびカナダの損害 査定額を発表した。この問題については、米通商代表部(USTR)は3月22日、 EUが5月13日の実施期限までにWTO裁定に従わない場合は、その制裁措置と してEUからの輸入品の一部に対して100%の報復関税を課すると表明していた。 結果的に、EUが裁定に従わなかったため、USTRは、米国産牛肉の輸出機会 の損失額に相当する額として、2億2百万ドル(242億円:1ドル=120円) のEU産品に対して報復関税を課するとして、WTOにその認可を要請した。これ に対し、EUは、米国の損害額は5千4百万ドル(65億円)以下であると主張し、 両者の主張に大きな隔たりがあった。 今回、WTO仲裁パネルによって発表された米国の損害額は1億1,680万ド ル(140億円)であり、米国の主張の約6割、EUの主張の2倍強となったが、 単純に金額を比較すると、EUの主張にやや近い評価額となった。 グリックマン農務長官は、損害額が過小に評価されたとして不快感を示したもの の、WTO裁定を受け入れると表明した。また、バシェフスキーUSTR代表は、 EUとの問題の解決策について、まだ交渉する余地があることを示唆した。 米国の最終的な報復関税の対象品目リストは、数週間のうちに発表される見込み である。 米国食肉協議会(AMI)、ファーム・ビューロー、全国肉牛生産者・牛肉協会 (NCBA)および米国食肉輸出連合会(USMEF)の牛肉関係4団体は、共同 で声明を発表し、今回、EU産品の輸入に対して制裁措置を取らざるを得なくなっ たことに対して遺憾の意を表明するとともに、制裁に当たっては、対象品目を定期 的に入れ替え、すべてのEU諸国が影響を受ける方式とするようUSTRに提案し ている。さらに、EUの消費者に対して、米国の牛肉生産の科学的な側面や牛肉の 安全性を学べるよう、インターネットによる情報提供を開始した(注:アドレスはhttp://hill.beef.org/eu/)。 NCBAは単独でも声明を発表し、今回WTO仲裁パネルによって示された損害 額は、EUが輸入禁止措置を開始した89年の損害額に近いものであり、その後の 米国の牛肉輸出の著しい伸びを評価していないとして不満を示した。 他方、カナダは、カナダ産牛肉の輸出機会の損害額を5千1百万ドル(61億円) と表明したのに対して、WTO仲裁パネルによる評価額は1,130万ドル(14 億円)と、カナダの主張の約2割の水準となった。カナダによる報復関税対象品目 の最終リストは、7月末までに発表される見込みである。
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