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【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 7月22日発】タイでは、家畜を含む農産物、 日用雑貨品、耐久消費財、医薬品など多くの商品が、北部で国境を接するミャンマ ーなどからチェンライ、ターク県などを経由して、国内市場に輸入されている。 バンコク銀行の調査レポートによると、本年5月におけるミャンマーからの輸入 額は、前月の5千万バーツ(1バーツ=約3.4円)から8千600万バーツとな り大幅に増加した。その輸入された商品のほとんどは、北部で国境を接しているタ ーク県を経由して輸入された4千400万バーツの生体牛で占められていた。さら に、ラオスからの同月の輸入は、前月の4倍の4千400万バーツにもなっていた。 このような増加は、例年5月中旬から始まる雨期までに輸入を終了させるために 毎年見られているが、今年はタイ国内の肉牛が大幅に不足しているため、特に輸入 頭数が増加したとしている。 一方、タイに輸入される家畜は、病気に汚染されていないことを確認するため、 通常21日間の検疫を受けることとなっている。しかし、これまでにも一部の悪徳 な家畜輸入業者が、検疫を逃れるため病気に汚染された家畜を不法に密輸入し、国 内の家畜市場などに流通させ、周辺の家畜に病気を発生させる場合が見られており、 大きな問題となっていた。 このような状況の中、政府は、6月28日にミャンマーから輸入した生体牛が口 蹄疫に汚染されていたことが判明し、急きょ7月5日から2ヵ月間、国境を接する チェンライほか7県に対し、生体牛の輸入を禁止する措置を講じるとともに、北部 国境から密輸入される家畜の監視を強化することとした。 これは、国内の一部清浄化された地域から食肉の輸出を求める政府の交渉に、大 きな支障を来すために強く出された措置で、家畜疾病の蔓延防止の強化に乗り出し たものとみられている。また、家畜輸入業者では、税金徴収率の向上により政府の 歳入の増加を図るために、北部国境地域における密輸入の取り締まり強化に乗り出 したのではないかと憶測している。 しかしながら、同輸入業者によると、この禁止措置は、雨期に入る以前に公表さ れたものの、一部の業者には情報の伝達が間に合わず、数百頭の生体牛の輸入がで きなかったとして、公表のあり方に問題があったとしている。 なお、97年にタイが生体で輸入した牛および水牛の頭数は、それぞれ23,98 7頭および8,89l頭で、全頭数が北部国境に接する次の国から輸入された。ミャ ンマーがそれぞれ19,434頭および7,781頭で全体の8割以上を占めている。 また、カンボジアが4,314頭および855頭、ラオスが50頭および257頭 であった。
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