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【ブラッセル駐在員 池田 一樹 5月27日発】EU委員会の豚肉常設委員会予 測グループによると、EUの本年の豚肉生産は前年比60万トン程度の増産が見込 まれている。市場価格は底を打ち、第3四半期からは過去最低を記録した前年を上 回って推移するものと予測しているが、2年前に比べると依然としてかなり低いレ ベルとなっている。 本年の豚肉生産量(枝肉ベース)は1,810万トンで、前年に比べ3.4%の増 産と見込まれている。EUでは、96年に再燃した牛海綿状脳症問題で、牛肉の代 替として豚肉需要が高まり、また、97年にはオランダを中心とした豚コレラの発 生に伴う大量の豚の処分で、市場がひっ迫したことなどから、豚の生産が刺激され た。この結果、昨年の生産は前年比約7%程度の増加とみられている。本年も増産 傾向が当分続き、第4四半期以降にようやく前年を下回る見込みである。 一方、域内需要や輸出は、近年増加しているものの生産量の増加には及ばない。 また、昨年夏には、EUの最大の豚肉輸出市場であるロシアが経済危機に陥ったた め、輸出が一時ストップしたこともあり、EU豚肉市場はかなり緩和しており、市 場価格も低迷している。それでもなお増産が続いているわけであるが、これはEU には生産抑制対策がない中で、専業化の進む養豚農家は、生産を止めるに止められ ないというところが一般的な理由のようである。デンマークでは、一昨年の好況時 の利益がほとんど設備投資に回されており、施設を遊ばせるわけにはいかないこと も大きな理由とみられる。 EUは現在、だぶついている豚肉在庫に対して民間在庫補助制度を発動し、保管 費用を負担している。4月19日現在で、約28万トンが同制度の適用を受けてい る。これは、EUの年間豚肉輸出量(約100万トン、加工品を含む)の約3割に 相当する。また、昨年5月から再開された輸出補助金は、その後数回増額されてい る。特に、ロシア向け輸出は、EU市場の正常化へのカギを握っているとも言える ため、輸出補助金も70ユーロ(約9,100円:1ユーロ=130円)/100 kgと高額になっている。現在のEUの豚肉の平均市場価格が約100ユーロ(約1 万3千円)/枝肉100kgから見ると7割に相当する。このほか、ロシアに対して は、本年8月15日までに10万トンの豚肉を食糧援助することとしている。援助 豚肉は市場で販売され、ロシアはその利益を生活困窮者対策に回す予定である。た だし、その販売価格をめぐり、EUとロシアとの折り合いがついていないことなど から、輸送が滞っており、現在までのところ豚肉は約2万トンが輸送途上にあるに すぎない状況である。 なお、豚肉常設委員会予測グループは、EU内の豚肉関係者で構成されるが、E Uに対する拘束力はない。
表 EUの豚肉生産量および価格見込み(99年)(単位:千トン、ユーロ/100kg(ともに枝肉ベース))
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年計 | |
生産量 | 1,455 | 1,463 | 1,485 | 1,427 | 1,387 | 1,496 | 1,588 | 1,583 | 1,615 | 18,148 |
前年比 | +6% | +6% | +6% | +1% | +1% | +1% | -1% | -0% | -0% | +3.4% |
価 格 | 109 (前年同期比▲15%) | 117 (+1%) | 128 (+34%) | − |
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