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【ブラッセル駐在員 井田 俊二 6月3日発】ベルギー政府は5月28日、小売 店に対し同国産鶏肉・鶏卵の販売中止を指示した。この措置に端を発したベルギー 産鶏肉・鶏卵のダイオキシン汚染問題は、その後の調査の結果、牛および豚でも同 様の問題が確認されたためさらに影響が拡大している。EU委員会は6月2、3日、 この問題の対応策を決定した。 ベルギー政府は、5月28日、同国産鶏肉・鶏卵から高濃度のダイオキシンが検 出されたとして、小売店に対し国産鶏肉・鶏卵の販売を中止するよう指示した。3 1日には、販売中止の対象を同国産鶏肉・鶏卵を原料とする製品(マヨネーズ、ケ ーキ等)に拡大した。 ベルギー政府によると、この問題は、99年2月、複数の養鶏農家において、雌 種鶏に異常(産卵率、卵重量の低下等)が発生したことに端を発している。飼料を 供給した業者が原因を調査したところ、飼料が関与していることが判明した。さら に専門家による分析の結果、4月26日、飼料および鶏脂肪から高濃度のダイオキ シンが検出されたことが判明した。この報告を受けてベルギー政府は、関連がある とみられる飼料業者の出荷停止、鶏卵等追加分析の実施等の措置を講じた。1カ月 後の5月26日、検査の結果、ふ化用鶏卵等からも同様の結果が確認されたため、 鶏肉・鶏卵の販売禁止措置を講じるに至った。問題の鶏肉・鶏卵は主に3〜4月に 市場流通したが、5月下旬時点でまだ流通していると判断し、この販売禁止措置を 講じたとしている。 飼料の汚染源は、99年1月、ベルギーの業者が家畜飼料用原料として出荷した 油脂であるとみられている。この油脂は、1月下旬、家畜飼料製造業者(ベルギー 10者、フランス1者およびオランダ1者)で家畜用飼料(構成は穀類、ビタミン ・ミネラル、油脂および動物たんぱく)として加工され、養鶏農家(ベルギーで4 75農家(6月3日現在))に販売された。 この問題の発生後、近隣諸国では次のような対策を講じている。フランス、ドイ ツ等では、ベルギー産の鶏肉製品を食べないよう指導した。ロシア、ポーランドで は輸入禁止措置を講じた。また、オランダおよびベルギーでは、問題の飼料が供給 されたとみられる養豚農家で出荷を規制している。 一方、EU委員会は、6月2日、SVC(常設獣医委員会)で対応策を決定した。 これによると、@99年1月15日〜6月1日に汚染飼料を使用した養鶏農家で生 産されたすべての鶏肉・鶏卵(2%以上の鶏卵を成分とする製品を含む)および問 題の飼料を追跡・調査し市場から排除、滅却すること、Aベルギー政府は、EU加 盟国の調査に当たり十分な情報を提供すること、Bベルギー政府は、鶏肉・鶏卵を 輸出する際に当該養鶏農家で生産されたものでない旨の証明を添付することとなっ た。さらに3日、問題となる飼料が牛(150農家)および豚(540農家(いず れも6月3日現在))の生産農家へも販売されていたことが確認されたため、牛、 豚由来の畜産物およびそれを原料とした製品(乳製品を含む)でも鶏肉・鶏卵と同 様の措置をとることを決定した。 各国で輸入規制等の対策が講じられる中、飼料汚染源物質の汚染原因の特定等現 在行われている調査・分析の結果が注目される。
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