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【シンガポール駐在員 外山 高士 6月3日発】フィリピンのエストラーダ大統 領は、新しい農業長官に元上院議長のアンガラ氏を指名し、同氏が就任した。同氏 は農政通で知られていることから、畜産団体などが長官就任を歓迎しており、今後 の活躍が期待されている。 フィリピンのエストラーダ大統領は、新しい農業長官として、元上院議長のアン ガラ氏を指名し、同氏は5月25日に長官に就任した。前長官であったダール氏は、 食糧安保に関する大統領補佐官となったが、その仕事の多くは農業長官の所管とな っているなど、事実上の格下げとなっている。 アンガラ新長官は、減少する農産品の生産に歯止めをかけるため、97年に「農 業と漁業の近代化に関する法律」を策定したり、昨年には学乳予算の増額に深くか かわるなど農政に強い影響力を有し、また、上院議長を務めていたなど、政界にお いて実力を持った人物として知られている。しかし、98年5月に実施された大統 領選挙では、エストラーダ氏などと争って落選している。 生産者団体などは、農政に詳しい人物であることから、同氏の長官就任をおおむ ね歓迎している。養豚生産者の組合などは、いち早く同氏への全面支持を表明して おり、農業部門のためにより多くの予算を獲得してくれるであろうし、上院議長と しての経験が大いに役に立つであろうと同氏の今後の活動に期待を寄せている。こ のように畜産業界は同氏を歓迎する動きを見せている。しかし、ココナッツの生産 者組合は、同氏が以前から、70年代にココナッツ生産者たちが積み立てた開発資 金を、他の産品に流用することを提案していたことから、同氏の長官就任を歓迎し ていないなど、必ずしも生産者団体からの全面的な支持を受けているという状況で はない。 一方、同氏は長官就任の記者会見で、農業生産額の約50%を占める穀物、特に コメとトウモロコシの増産、および管理状態の悪化により約40万ヘクタールの農 地が使用不能となっているかんがい設備の再整備を主要な課題として取り組むとの コメントを発表した。また、同国の国民総生産(GDP)の20〜25%を占めて いる農業分野の来年度の予算を教育分野に次ぐ重要分野として取り扱うよう大統領 に要望するなど、農業長官としての仕事に意欲を見せている。 エストラーダ大統領は、前大統領のラモス氏やアキノ氏を政治顧問に迎えるなど、 奇抜な人事で注目されている。今回、大統領選挙での競争相手であったアンガラ氏 を農業長官に迎えたことは、基本政策の柱の1つである食糧自給率の向上に、さら に弾みをつけたいとする大統領の希望が反映されているものとみられており、同氏 の今後の活躍が期待されている。
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