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【デンバー駐在員 本郷 秀毅 6月3日発】米農務省(USDA)は5月25日、 最近の調理済み食肉および家きん肉が原因とされるリステリア菌による大量食中毒 事件の発生および同病原菌に係る多くの製品回収措置の発動を踏まえ、短期対策お よび長期対策からなるリステリア菌に対処するためのアクション・プランを発表し た。 リステリア菌(Listeria monocytogenes)は、土や水などの中に広く存在しており、 未調理の食肉や野菜などの生の食品を汚染するばかりでなく、ソフト系チーズ、ホ ット・ドッグ、ランチョン・ミートなどの加工食品を汚染することでも知られてい る。 家畜がリステリア菌を腸管内に保有していても病気にはならないし、ほとんどの 人は、リステリア菌を摂取したとしてもリステリア症にかかることはないとされて いる。しかし、新生児や老人のほか、ガン治療、エイズ、糖尿病、腎臓病などの免 疫系統の弱っている人には、致死的な病気になる可能性がある。妊婦に対する症状 は軽くとも、胎児の流産や死産を引き起こすことが知られている。 中央疾病管理予防センター(CDC)によれば、米国内でリステリア症により重 い症状を示す患者数は年間1,100人程度であり、このうち約25%が死亡する としている。 こうした中、98年の秋から99年の初めにかけて、サラ・リー社(イリノイ州 シカゴ)のホットドッグおよびデリカテッセン食肉が原因とされるリステリア症に より、6人の新生児の死・流産を含め、合計21人が死亡し、101人が食中毒に かかるいう事件が発生した。 こうした事態を踏まえ、USDAは99年2月、リステリア症対策を構築するた めに公聴会を開催し、関係各方面からの意見を聴取した上で、5月25日、リステ リア菌に対処するためのアクション・プランを発表することとなった。 アクションプランは3つの短期対策および4つの長期対策からなっており、その 概要は以下の通りである。 短期対策としては、@食品安全検査局(FSIS)は、5月26日付けの官報を 通じて、調理済み食肉および家きん肉の製造業者に対して、危害分析重要管理点監 視方式(HACCP)がリステリア菌に適切に対処しているかどうかを確かめるた め、その再評価を行うことを薦める通知を行う。AFSISは、業界に対して、こ れまで他の食肉および家きん肉処理業者がリステリア菌による調理済み食品の汚染 防止を図るために行ってきた優良対策について、その活用が可能となるよう手本を 提供する。BFSISは、リステリア症にり患する可能性の高い人々を対象として、 教育啓もうを行う。 長期対策としては、@FSISは、調理済み食品生産後のリステリア菌増殖に関 する研究計画案を策定するとともに、農業試験研究所(ARS)に対して、その研 究を要請する。AFSISは、調理済み食品製造工場がリステリア菌に対処するた めに適切にHACCPを再評価したかどうかを検証するため、綿密な検証計画案を 開発する。BFSISは、食品医薬品局(FDA)とともに、リステリアの危害評 価を実施する。CFSISは、すべての病原菌を管理するため、調理済み食品に関 する食品安全達成基準を策定する。
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