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【ブラッセル駐在員 池田 一樹 6月10日発】ベルギーの畜産物のダイオキシ ン汚染問題は、96年の牛海綿状脳症(BSE)問題以来の深刻な食品汚染問題と なった。関係者は事態の解明を急ぐとともに、さまざまな安全対策を講じている。 早期に終息することが望まれるが、その後も、再度失った消費者の信頼の回復が大 きな課題として残ることとなる。 EUは、今般のダイオキシン汚染問題対策として、汚染した飼料を使用した疑い があるとして加盟国政府が出荷制限を課している畜産農家に由来する、鶏肉、鶏卵 および牛や豚から生産される畜産物等の流通を禁止することを決定した。 しかしながら、ベルギー政府は、豚および牛に由来する畜産物については、独自 の判断に基づいて、バターおよび脂肪分を多量に含む製品以外については特段の規 制を講じていない。EU委員会は、EUの決定に従うよう求めているが、ベルギー 政府は引き続き、乳製品等の流通を認めるようEU委員会に求めている模様である。 鶏肉および鶏卵については、ベルギー政府はすべての製品の流通を停止したが、清 浄農場の特定ができたとしていったん生産販売の再開を認めた。しかしながら、直 後に清浄農場リストが撤回され、混乱が生じている。ベルギーからの輸出に当たっ ては、汚染農場由来でない旨証明した同国政府発行の証明書が添付されることとな るが、今のところ証明行為は実施されてはいない様子である。EU委員会が6月9 日報じたところでは、ベルギーでは家きん農家811戸、養豚農家746戸および 牛飼養農家393戸が出荷制限下にある。一方、ベルギー政府は6月9日、新たに 2つの飼料工場が汚染飼料を生産した疑いがあることが判明し(ベルギー国内合計 12工場)、760農場が出荷制限農家に追加されると発表しており、EU委員会 が発表した制限農場数は増加するものとみられる。 オランダ政府は、汚染が疑われた飼料や畜産物を検査した結果、汚染は認めらな かったと発表し、出荷制限の解除を検討中である。これに対して、EU委員会は、 常設獣医委員会での検討が終わるまで結論を待つよう求めている。家きん農家76 戸および養豚農家350戸が出荷制限下にある(6月9日EU委員会発表)。 フランス政府は、汚染が疑われる飼料を使用した農家の追跡と関連畜産物の回収 が進められており、家きんに関しては終了、乳製品については現在実施中、豚由来 の畜産物については今後実施される。並行して進められている畜産物などの検査結 果は間もなく判明するとみられている。家きん農家81戸、養豚農家34戸、牛飼 養農家62戸および羊飼養農家4戸が出荷制限下にある(6月9日EU委員会発表)。 汚染源は、ベルギー国内の飼料向け油脂工場から出荷された油脂とされている。 汚染原因は確定していないが、これまで有力視されていた保管タンク内での汚染の 可能性は低くなっており、代わって、当該油脂に混合されたとみられる油脂が汚染 源として浮き上がっている。この油脂は、再生油とみられ、ベルギーおよびオラン ダから搬入されたと報じられている。 今回のダイオキシン汚染問題にせよ、3年前に世界中を震撼させたBSE問題に せよ、飼料を介した汚染の恐ろしさを物語っている。
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