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【ブラッセル駐在員 井田 俊二 6月24日発】EU農相理事会は、6月15日、 EUにおける採卵鶏の飼養に関する最低基準を定めた提案を採択した。動物愛護の 観点から、採卵鶏1羽当たりのバタリーケージの最低基準面積を今後大幅に拡大す るなど、従来の基準を一層強化することとなった。 EU農相理事会は、6月15日の理事会でEUにおける採卵鶏の飼養に関する最 低基準を定めた提案を採択した。この結果、EUにおける動物愛護に関する基準が、 今後一層強化されることとなった。 これによると、採卵鶏1羽当たりのバタリーケージの最低基準面積を、従来の4 50cuから2003年以降550cuに拡大する。また、2003年以降生産者 がケージを導入する場合、従来方式のケージに代わって一層動物愛護に配慮した新 方式のケージを設置することが義務付けられている。新方式のケージは、1羽当た りのケージの最低基準面積を大幅に拡大し、750cuするとともに、とまり木、 産卵用の巣および砂浴用の設備を配備することが規定されている。さらに、201 2年以降ケージにより採卵鶏を飼養する場合、すべて新方式のケージの基準を満た さなければならない。 また、詳細はまだ不明であるが、この基準にはフリー・レンジ等ケージ以外の飼 養方式による基準も定められている。 EUにおける採卵鶏の飼養に関する最低基準は、現在88年の理事会指令(88 /113/EEC)で規定されている。今回の採卵鶏の飼養に関する最低基準の強 化は、96年のEU委員会レポートの結果に基づき、98年3月(99年5月に一 部修正)に同委員会が理事会に対して提案したものである。 この提案では、動物愛護の観点から従来のバタリーケージ方式による採卵鶏の飼 養が、本来、個体に備わっている鶏の羽ばたき等の動物行動学的・生理学的な機能 を阻害するとしており、その結果、骨格のぜい弱化による羽折れ等の弊害をもたら していると指摘している。このため新たな基準は、採卵鶏に備わっている生来の機 能の回復を図るほか病理面および倫理面等を配慮して定められた。 この基準の強化に対して、EUの生産者は、設備投資に伴う資金負担および生産 性の低下による国際競争力の低下を懸念している。 一方、EU委員会は、このような動物愛護に関する基準を国際的な共通認識とす るため、今年末から始まる世界貿易機関(WTO)交渉に提案することを示唆した。 EU委員会は、この施策がEUの鶏卵産業に及ぼす影響等について調査を実施し、 2005年までに理事会にレポートを提出することとしている。家畜に対する動物 愛護への配慮は、多面的な検討が必要となることから、今後、EUの一貫した施策 が域内および第3国にどのように影響を及ぼしていくか注目される。
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