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【シンガポール駐在員 外山 高士 2月25日発】タイ政府は、経営が行き詰ま っている国営乳業会社の民間への売却を発表した。経済危機に伴う政府機関の縮小 化の一環とみられているが、同社に生乳を出荷していた酪農家を中心に、売却反対 の動きも見られている。 タイ政府は、総額約6億5千万バーツ(1バーツ=約3.3円)の負債を抱えて、 経営が行き詰まっている国営の乳業会社、タイ酪農振興公社(DFPO)を民間へ 売却すると発表した。 DFPOは、デンマーク政府の支援の下に61年に設立された酪農場を母体とす る歴史ある国営企業であり、現在、1日当たり200トンの処理能力を持つ工場1 カ所と、60トンの工場3カ所を所有している。また、これらの工場ではLL牛乳 を中心に製造しており、赤牛印ブランドの牛乳として、一時はLL牛乳の国内流通 量の30%近くを占めていた。 しかしながら、最近では、外資系の大手乳業メーカーが市場に参入したこと、国 営企業であることから価格競争力が強くないことにより、徐々にそのシェアが低下 し、20%を下回る状況となっている。また、DFPOは製品の卸売先を固定して いたが、97年の卸売会社への売上高が3億バーツと、予定されていた15億バー ツを大きく下回るなど、販売不振となっていた。また、以前契約していた卸売業者 との間で、約1億バーツの未回収金に関する金銭問題があり、これらの状況からD FPOでは、酪農家に支払う生乳代金の未払いが生じるなど、経営に困難を来して いた。 同国政府は、国際通貨基金(IMF)との合意に基づき、政府機関の簡素化を進 めているが、DFPOについても民間への払い下げを行うこととし、3月を締め切 りに入札を開始し、現在、13社が入札に参加しているところである。 一方、同社に生乳を出荷している約5千戸の酪農家は、未払いになっている生乳 代金の即時支払いの要求と、安定的な生乳の出荷が約束されない同社の民間への売 却に反対し、道路に生乳をばらまいたり、牛乳の運搬経路である高速道路を封鎖す るなど、抗議行動を行っている。また、同社の約500人の労働者も、大幅な人員 削減を含む売却への反対と、解雇された労働組合の代表者を含む5人の復職を求め て、この行動に同調しており、反対運動は拡大している。 このため、同国政府は、出荷先に困っている酪農家のため、生乳を他の乳業メー カーに買い取ってもらうよう交渉を行ったり、酪農家への支払いを中心としたDF POへの緊急融資を約3億バーツ行うこと、解雇された5人の復職について再度話 し合うこと、払い下げの入札の締め切りを5月まで延期することなどを決定し事態 の収拾に乗り出している。これにより一応の決着はつくものとみらているが、今後 の政府の動向が注目されている。
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