ALIC/WEEKLY


米食肉業界、畜産物価格強制報告法案にほぼ合意



【デンバー駐在員 本郷 秀毅 5月13日発】大手パッカーによる寡占化を背景
として開始された主要家畜生産者団体と主要パッカー間の強制的価格報告法案に関
する交渉が、ほぼ合意に達した。同法案は、パッカーに対して、と畜向けに購入さ
れた家畜の取引価格やその条件などについて、詳細にUSDAに報告することを義
務付けようとするものである。

従来、と畜向け肉用牛の価格形成は、生産者とパッカーによる相対取引が主体であ
ったが、大手パッカーによる寡占化の進展により、市況公式などに基づく販売契約
が増加しつつある。このため、大手パッカー支配による肉用牛の販売契約が、価格
形成上の争点となっていた。
 
 具体的な争点は、米農務省(USDA)に対する取引価格の報告を禁止するとい
う規定が販売契約の中に挿入されるケースがあることである。USDAには、高価
格で取り引きされた肉用牛の情報が報告されないため、結果的に、USDAが取り
まとめて報告する価格が市場実勢よりも低くなり、この価格を基礎に取引を行う肉
用牛生産者が、買い手に対して極めて不利な条件の下に置かれるというものである。

 こうした状況の中で、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、昨年来、肉用
牛取引価格情報などについて、強制的に報告を義務付けるよう求めていた。当初、
こうした肉用牛団体の動きに対して傍観的な立場をとっていた全国豚肉生産者協議
会(NPPC)も、昨年末の歴史的な豚価の低迷を受けて、NCBAの動きに同調
することとなった。今回の動きには羊の生産者団体も参加している。

 これまで強制的な価格報告に反対していた主要パッカーが柔軟な姿勢を見せ始め
た背景には、州段階で、次々と同様な法案が可決されつつあったことがある。大手
パッカーとしては、各州でバラバラな報告を義務付けられるよりは、全国統一的な
報告を選択したものとみられる。

 具体的な合意内容は、肉用牛、肉豚ともほぼ同様なので、ここでは肉用牛の主要
例を挙げる。

・連邦食肉検査法が適用されるパッカーは、スポットまたは現金取引について、価
格、量およびその条件を1日2回以上USDAに対して報告すること。

・契約により公式に基づき購入される肉用牛およびパッカー所有の肉用牛について
は、別途取引数量に関して報告すること。

・USDAは、全国の小売取引データの販売数量および価格に基づき、小売価格の
情報提供方法を開発すること。

・連邦政府の同法案に基づく規定は3年間有効とし、州の法律を置換すること。

 なお、肉用牛のスポットまたは公式による価格形成の様式などについては、一部
未解決の部分が残っている。

 このような合意内容について、農業団体の指導者は、これが生産者に対してより
高い取引価格をもたらすことを保証するものではないものの、生産者により強い交
渉ポジションをもたらすものになるだろうとしている。

 本件に関しては、4月末に下院農業委員会でのヒアリングが行われており、5月
26日には上院農業・栄養・林業委員会でのヒアリングが行われる予定である。


元のページに戻る