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【ブラッセル駐在員 井田 俊二 11月25日発】EU委員会では、2000年 7月から始まる新年度のEUにおける学校向け牛乳補助制度に係る予算を大幅に削 減することなどを検討している。これによると、99年度の予算額(1億6百万ユ ーロ(約113億円):1ユーロ=107円)を2000年度には8千4百万ユー ロ(約90億円)に削減する。さらに、補助要件として加盟国等が補助を均等負担 とすることとし、EU の財政負担軽減を図ることとしている。 EUにおける同制度は77年に導入された。同制度の運用状況については、加盟 国間で差が見られるが、保育園・幼稚園から大学に至るまでを対象として、年間3 7万5千トン(96/97年、全脂乳ベース)の学校向け牛乳に補助している。 (単位:千トン、%)
国 名 |
補助数量 (96/97年度) |
牛乳出荷数量 (96年) |
比 率 |
フランス ドイツ イギリス スウェーデン スペイン フィンランド デンマーク イタリア オランダ |
94 86 47 34 33 22 13 12 9 |
23,075 27,180 14,058 3,258 5,409 2,329 4,495 10,040 10,535 |
0.4 0.3 0.3 1.0 0.6 0.9 0.3 0.1 0.1 |
15カ国合計 |
375 |
113,400 |
0.3 |
(注)数量は全脂乳ベース
EU委員会は、同制度の見直しを検討するに当たり、99年2月、同制度の評価 に関するレポートを公表した。このレポートでは、同制度がその目的である牛乳消 費量の促進および学童の栄養・健康の維持に大きく貢献していると言えないと報告 している。このような状況下、99年4月に提示された当初の2000年度予算案 では、同事業費は99年度の半分(5千3百万ユーロ(約57億円))に削減され た。また、EU委員会が、2000年7月をもって同制度を廃止することを検討中 であると伝えられた。 このため、イギリス、フランス等加盟国では、乳業者を中心に同制度の継続を求 める運動が見られた。特にイギリスでは、乳業者団体、生産者団体等が団結し同制 度の継続を求めるキャンペーンを行った。このキャンペーンでは、@同制度が牛乳 余剰対策に貢献していること、Aカルシウム等栄養面で学童の健康に貢献している こと、B制度 を廃止した場合、牛乳と競合するソフトドリンク等の消費を助長し、 牛乳消費の減少を加速する恐れがあることなどがアピールされた。 今回の提案では、こうした加盟国の動きを反映し、同制度の継続、予算額の積み 増し等見直しが行われたものである。同制度は、93年に制度の廃止が提案された が、理事会で棄却された経緯がある。長年にわたり実施され定着してきた制度であ り、今後どのような形で制度が継続していくか注目したい。
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