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【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 11月25日発】タイで国産牛乳の消費拡大 を担っている国産牛乳飲用促進公社は、保健科学局が牛乳などの品質検査を抜き打 ちで実施した結果の一部を公表している。 同公社によると、保健科学局が過去6ヵ月間に、全国で100を超える牛乳およ び生乳などのサンプルを収集し、検査を実施したところ、基準より栄養価の不足す るもの、食中毒の原因となる細菌および基準値を超える大腸菌、抗生物質などが発 見されたとし、その発見されたサンプルの公表は避けているが、細菌に汚染された ものと賞味期限を超えているものが最も多く見られたとしている。 このことから、多くの学校で飲用されている学校給食用牛乳(学乳)の品質につ いても、基準を満たしていないものが多いとみられている。また、これらを製造・ 販売した業者は、UHT牛乳(室温流通可能)を製造するに当たっても、一部生乳 を原料としていると主張しているにもかかわらず、実際には、輸入された脱脂粉乳 のみを原料としている場合が多いとみられている。 このため、同公社は、消費者、特に子供が基準に満たない牛乳を飲用しないよう 監視を強化するとともに、汚染などが確認された牛乳を製造・販売した悪質な2乳 業会社を、学乳などの取引停止処分としている。 一方、少なくともタイの学乳は国産生乳が使用され、かつ小規模の乳業会社また は販売業者からの供給が6割を占めているといわれている。また、この学乳を購入 するに当たっては、学校の意向を尊重し、購入する乳業会社などの選定は学校に任 されている。 しかしながら、多くの学校ではコストの削減などを図るために、しばしば基準を 満たさない牛乳を供給する乳業会社などと分かりつつ、安価であるという理由で、 小規模の乳業会社などから学乳を購入する事例が多く見られている。 このような影響を受けた大手乳業会社では、学乳などの市場シェアが低下すると ともに、国産生乳を高価格で酪農家から購入しなければならないことから、生産コ ストの上昇に直面している。また、タイ酪農振興公社(DFPO)においても、学 乳の売上げが急減しているとみられている。反面、基準を満たさない牛乳を製造・ 販売する乳業会社は、低品質なものを低価格で供給することから、市場のシェアは 拡大している。 さらに、タイの経済は回復しつつも、乳製品 の消費は依然として低迷している。 多くの乳業会社がコスト削減を図るため、安価な輸入脱脂粉乳の使用を増加させて おり、この影響を受けた国産生乳は、1日当たり200トン程度が余剰とみられて いる。 このようなことから、危機感を募らせた生産者は、消費者が牛乳を購入するに当 たって、その栄養価および使用された原料が容易に分かるよう牛乳に品質表示を行 うとともに、当分の間、脱脂粉乳の輸入を中止するよう政府に強く求めている。
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