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【ブラッセル駐在員 井田 俊二 10月14日発】EU委員会は、10月13日、 EUにおける牛肉表示の実施に関する新たな計画を提案した。この計画は2段階で 実施され、すべての加盟国で牛肉の由来について表示を義務付けるものとなってい る。その概要は、次の通りである。 2000年以降、十分な履歴等を記録したパスポートのない牛をと畜した場合、 と畜場段階で次のような表示が行われる。 第1段階は、牛個体の登録および追跡システムが整備されていない牛個体に対し、 最低限、次の項目を表示する。 ・牛個体と牛肉をつなぐ番号(コード) ・牛と畜場承認番号および国名等 ・牛肉加工施設承認番号および国名等 ・牛カテゴリー、と畜日、最低熟成期間 第2段階は、2003年以降、牛個体の登録システムにより次の項目を追加する。 ・ 牛個体の誕生、肥育、と畜および加工が実施されたそれぞれの国、地域等 ただし、牛個体の誕生、肥育、と畜および加工場所の表示は、次の通り簡略表示 される。 ・ 加盟国(単一)の場合:「○○国産」または「EC産」 ・ 加盟国(複数)の場合:「EC産」または「EC(2カ国以上)産」 ・ 加盟国および非加盟国の場合:「EC産および非EC産」 ・ 非加盟国の場合:「○○国産」または「非EC産」 また、ひき肉および切り落とし牛肉等を生産または流通する場合、最低限当該牛 肉が生産された加盟国名、加工場所または第3国名を表示しなければならない。 EUにおける現行の牛肉表示規則は、牛の登録・個体識別システムの整備ととも に97年に理事会規則(820/97)で定められている。この理事会規則は、牛 肉の由来を追跡できるシステムを構築することにより、消費者に的確な牛肉情報を 提供し、かつ、牛海綿状脳症(BSE)等の問題に的確に対応できるための体制の 整備を目的としている。 ただし、この理事会規則は、採択に当たり農相理事会単独で審議されたため、E U委員会は、EU議会との共同審議を伴わない制定プロセスを不当とし、欧州裁判 所に提訴していた。欧州裁判所は99年2月、現行の規定は違法であるとの勧告を 行い、近々最終的な裁定が下される見込みである。 今回の提案は、こうした動きを反映したものとみられ、今後、農相理事会および 欧州議会で共同審議されることとなっている。 また、EU委員会は、現行の理事会規則で定めている牛肉表示の義務化(200 0年1月1日)を、新たな実施計画が採択された1カ月後(ただし、最大2001 年1月1日)まで延長する提案を行った。 現行の理事会規則に基づく牛個体情報のデータベース化等の実施状況は、いくつ かの加盟国で対応の遅れがみられている。今回の提案は、こうした現状を踏まえた 内容となっている。
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