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【シドニー駐在員 野村 俊夫 10月14日発】豪州では、来年7月から飲用乳 の流通販売を完全自由化するという大幅な制度改革が進められている。その実現ま でにはまだ多くの障害が残されているものの、飲用乳業界では、既に、これを想定 した企業間の主導権争いがし烈化している。10月12日には、他社からの合併提 案を無視して自社の組織改革を強行しようとした大手酪農組合メーカーの経営陣に 対し、傘下の組合員(酪農家)を誤った方向に誘導したとの有罪判決が下された。 豪州の飲用乳業界は、過去の業界再編により、既に、デイリーファーマーズ社 (ニューサウスウェールズ州:酪農組合経営)、ナショナルフーズ社(ビクトリア 州:豪州資本)およびパーマラット社(クイーンズランド州:イタリア系多国籍企 業)の大手3社の系列に、ほぼ統合されている。 このうち、唯一の酪農組合メーカーであるデイリーファーマーズ社は、自由化後 の市場で生き残るには外部資本の導入が不可欠だとし、企業形態を組合員の持株会 社に変更するとともに、その株式の25%を上場することによって外部からの資本 投資を募るという組織改革を昨年から進めていた。 ところが、この改革が最終段階に至った時(今年8月末:組合員による承認投票 予定日の2週間前)、パーマラット社がこのタイミングを見計らったかのごとくデ イリーファーマーズ社との合併提案を公表した。 その内容は、パーマラット社がデイリーファーマーズ社にポールズ社(クインズ ランド州:パーマラット社の子会社)の株式を売却して新会社を設立し、その上で パーマラット社が新会社の株式の約60%を高値で買い取るというものであった。 これに対し、デイリーファーマーズ社は、組織改革を妨害する意図が明白だと強 く非難し、これを無視して投票を強行しようとした。しかし、組合員に動揺が広が ったことからやむを得ず投票日を延期するとともに、改革案に賛成するよう、改め て組合員に訴えかけていた。 ところが、9月29日には、この対応に不信を募らせた2名の組合員が、合併提 案の内容を明確に公開・評価しないまま改革を強行しようとしたことは、傘下の組 合員を誤った方向に誘導したことになるとして、デイリーファーマーズ社の幹部の 経営責任を追求する訴訟を起こした。 今回の判決はこれに対して下されたもので、原告側の主張を全面的に認めたもの となった。原告となった組合員は、今回の判決を受けて、デイリーファーマーズ社 の会長を含む役員3名の辞任を求める意向を明らかにしている。 今回の1件は、デイリーファーマーズ社に対する傘下の組合員の不信を深めたこ とから、パーマラット社の提案に有利に作用するとみられている。 仮に両社の合併が実現すれば、豪州飲用乳業界の勢力図が大きく変わるだけに、 今後の成り行きが注目されている。
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