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【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 10月14日発】タイの鶏肉処理加工業者 (以下「加工業者」という。)は、EUが求める輸出基準を満たす鶏肉処理施設に 改善する準備を進めてきており、現段階においては、ほとんどが万全の態勢にある としている。 業界団体によると、加工業者は、来る12月6日から17日にかけて実施予定の、 EUの検査官による処理施設の検査に合格するため、20工場の処理施設の改善・ 補修などに、トータルで10億バーツ(1バーツ=約2.8円)を費やしたとして いる。また、生産段階においても、2003年1月1日からブロイラーに適用が見 込まれるEUの動物愛護基準に従って、飼料の生産から鶏舎に至る全施設のシステ ムなどの改善を行ったとしている。 このような状況の中、タイの大手加工業者であるチャロン・ポカパン(CP)は、 3年前からEUの基準を満たすべく準備を行ってきた。さらに、CPは、500店 舗以上を有し、仕入れなどに関し非常に厳しい基準を持つイギリスの大手量販店か ら、飼料生産システム、鶏の健康管理システムおよび処理システムについて問題な いというお墨付きを得ていることから、年末に実施されるEUの検査には、自信を 深めている。 しかし、ある中堅の加工業者は、処理施設内の室温を、EUの基準である10℃ から12℃に保つために、生産ラインの室温を制御する冷却装置などの改良に、多 額の出費を強いられたとしている。さらに、動物愛護規則に基づいて、鶏が処理さ れるまでに待機する場所の環境を良好にするために、換気装置および天井の改修な どを行うとともに、生産段階においても、鶏舎の改修などに多額の投資を要してい る。 また、既にブラジルで実施された同検査において、40工場のうち20工場のみ が合格であったという情報により、加工業者の多くは、EUの厳しい規則に対処す るため、細部に至るところまで神経をとがらせている。 なお、ドイツ、フィンランド、ベルギーなどのEU加盟国の専門家によって行わ れるEUの検査内容は、鶏の出荷および処理・加工方法、農家の飼養・管理、飼料 の生産および動物愛護の実施状況などとなっている。特に、飼料については、ベル ギーで飼料に混入して大きな問題となったダイオキシンの有無を主眼としている。 また、そのほかに、加工業者の研究室および衛生検査実験室なども視察することと している。 一方、タイ畜産局では、本検査を遺漏のないものとするために、政府内の関連す る部局と連絡を密にするとともに、それぞれの部局が保有する情報を共有するなど、 実務作業システムの改革を行っている。同時に、畜産局はEUの検査が行われる前、 少なくとも11月までに、処理施設がEUの基準に合致するかについて、最終チェ ックを行うこととしている。 最近、タイの鶏肉輸出をめぐる環境は、EU向けについては、利益商品であるむ ね肉に伸び悩みが見られ、また、日本向けについても、中国、ブラジルの低価格に よる輸出攻勢などで、非常に厳しいものとなっている。 今後、安定した輸出を図るためには、利益が見込めるEU市場の確保が先決で、 このためにも、EUの検査に合格することが、加工業者にとって重要な課題となっ ている。
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