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【ブラッセル駐在員 井田 俊二 9月16日発】EU豚肉管理委員会は、9月1 4日、EUで現在実施している豚肉民間在庫補助の発動を9月17日から解除する ことを決定した。豚肉民間在庫補助は、豚肉需給の緩和で低迷する豚肉価格対策と して98年9月に発動された。 98年9月28日から99年7月31日までの補助対象となる国別契約数量は、 次の通りである。
(単位:トン)
国 名 | 数 量 | 国 名 | 数 量 |
ベルギー |
15,914 |
イタリア |
32,138 |
デンマーク |
139,006 |
オランダ |
55,543 |
ドイツ |
55,863 |
オーストリア |
4,420 |
スペイン |
20,510 |
フィンランド |
766 |
フランス |
51,578 |
スウェーデン |
1,316 |
アイルランド |
2,084 |
イギリス |
1,381 |
15ヵ国合計 |
380,693 |
なお、直近までの契約数量は、42万トン程度に達しているとみられる。 EUの豚肉価格は、近年大きく変動した。96年には、イギリスにおける牛海綿 状脳症(BSE)問題の影響で豚肉需要が増加し、豚肉価格が一時急騰したが、そ の後終息した。また、97年には、主要豚生産国であるオランダで大規模な豚コレ ラが発生したため、一時的に需給がひっ迫し価格が急上昇した。しかしながら、他 の加盟国が豚増産を図ったため需給が緩和し、97年後半以降価格が急速に低下し た。さらに、98年8月には、最大の輸出相手国であるロシアで経済危機が発生し た結果、98年末には豚肉価格が記録的な低水準となり深刻な問題となっていた。 EUでは、対策として豚肉民間在庫補助のほか98年8月から数次にわたり豚肉 輸出補助金を引き上げた。さらに、各加盟国で繁殖メス豚のとう汰による豚飼養頭 数の削減を進めたが、加盟国で対応の差が大きく、EU全体の豚肉需給の改善に時 間を要した。特にスペインなどで豚飼養頭数の削減が遅れており、EU全体の豚肉 生産量が減少に転じるのは99年第4四半期以降になるとみられている。 最近の豚肉価格は、フランスやドイツなどで99年6月頃から価格が上昇に転じ て推移している。直近(9月5日現在)のEU豚枝肉参考価格は、100s当たり 128ユーロ(約1万4千円:1ユーロ=109円)で、最も価格が低かった98 年11月の88ユーロ(約9千6百円)から回復してきている。 EU委員会では、最近の価格動向を背景として、9月8日、ロシア向け豚肉輸出 補助金の引き下げを決定した。今回の豚肉民間在庫補助発動の解除は、これに続く 措置である。 しかしながら、最近の豚肉価格動向は、99年6月に表面化したベルギー鶏肉な どのダイオキシン汚染問題の影響による一時的なものであり、豚肉需給の改善はま だ先との見方もあることから、今後もその動向に注目したい。
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