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【シドニー駐在員 野村 俊夫 3月30日発】ニュージーランド(NZ)では、 現存する酪農組合(乳業メーカー)の大部分が合併して1つの巨大な乳業企業(メ ガコープ)を設立する計画が進められていたが、3月24日、2大組合間の合併交 渉が決裂し、当該計画が事実上挫折したため、7つの酪農組合とNZデイリーボー ドによる現行の業界体制が当面は継続される見通しとなった。 NZ酪農乳業界では、ここ数年来、政府の規制緩和政策(各種生産者ボードの見 直し)をきっかけとした全面的な業界再編が進められている。 既に、酪農組合はNZデイリーグループとキウイの2大組合を中心とする7つの 組合に整理統合されているが、98年7月には両組合が「戦略的提携」に合意して さらなる再編が開始され、99年5月には、一部の小規模組合を除く大部分の酪農 組合が合併してメガコープと呼ばれる年間生乳処理量約1千万トン(全国の約94 %)の巨大な乳業企業を設立する計画が提案された。 その後、政府の酪農乳業再建法案が国会で承認され(99年9月)、これによっ てメガコープの設立やNZデイリーボードの乳製品一元輸出権限の撤廃を含む業界 再編の枠組みが示された。ただし、政府は、当該法案の施行にはメガコープの設立 が必須の条件であり、これが実現しない場合には廃案となることを明らかにしてい た。 この時点で、メガコープの設立に3つの課題が残された。第1は各酪農組合が具 体的な合併案に合意すること、第2は国内法に基づいて自由取引(独占禁止)を監 視する商業委員会の承認を得ること、第3は各酪農組合の組合員の75%以上から 賛同を得ることであった。 このため、酪農乳業関係者はメガコープ設立準備委員会を設け、酪農組合間の合 併交渉と商業委員会対策を並行して進めていたが、今回、2大組合の間で相互の資 産評価をめぐる意見調整が不調に終ったことにより、政府が定めた法案有効期限 (本年9月1日)までに上記の3つの課題をすべてクリアすることは事実上困難な 情勢となった。 この結果について、政府のサットン農業大臣は、十分な交渉期間があったにもか かわらず2大組合が合併に合意できなかったのは非常に残念であり、政府としては 法案の有効期限を延期する考えはないとコメントした。ただし、両組合が合併に合 意した場合には法案の期限延長を考慮すると述べ、両組合に対し、相互の利害に固 執せず大局的な判断に基づいて合併交渉を継続するよう強く求めた。 NZ酪農乳業界は、7つの酪農組合とNZデイリーボードによる現行の業界体制 が当面は継続される見通しとなったが、メガコープ設立による業界再編を求める意 見も根強く残されており、今後の成り行きが注目されている。
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