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【シンガポール駐在員 外山 高士 3月30日発】フィリピンのアンガラ農務長 官は、このほど、鶏肉部分肉の輸入を禁止する考えを持っていることを発表した。 これは、農務省が毎週放送しているラジオ番組に農務長官が出演した際、聴取者か らの電話に答えたもので、同長官は養鶏業者とその家族の将来を考慮すると、禁止 措置を行うべきであると述べている。 同国の鶏肉の輸入は、ガット・ウルグアイラウンド(UR)合意に基づき、96 年からミニマムアクセス数量(MAV)を決定し、関税化されている。2000年 の鶏肉のMAVは18,790トンで99年と比べ1,044トン増となっている。 なお、MAV枠内の関税は45%、枠外は60%となっている。 しかしながら、同国の鶏肉の輸入量は経済の急速な発展に伴い急増しており、9 7年が2,770トン、98年が3,655トン、99年が24,701トンとな っており、MAV枠を超えて輸入される状況となっている。このため、国内小売価 格が、生産原価である1s当たり36〜40ペソ(1ペソ=約2.8円)とほぼ同 水準の41ペソ程度で推移するなど、国内生産を脅かす状況になっていた。農業省 では、この状況を打開するため、これまで無制限に許可していた免税店での輸入販 売を、99年9月から1ヵ月830当たりトンに制限し、輸入許可証の発行権者を 畜産局長から農務長官に引き上げる措置を行った。 一方、養鶏業者協会は、特に輸入量の多い米国に対し、フィリピンの鶏肉の輸入 額と大豆ミールやトウモロコシなどの飼料の輸入額を比較すれば、飼料の輸入額の 方が圧倒的に多く、米国にとって鶏肉を輸出することは、飼料のユーザーをなくす ことになると、輸出抑制の要望を出している。同協会によると、米国の鶏肉は、丸 どりでは1s当たり1.34ドル(1ドル=約110円)であるが、むね肉は3. 15ドル、もも肉は55〜60セントと、フィリピン人の好むもも肉の価格が大幅 に安くなっている。そして、MAV枠内の関税率45%をかけた後の価格でも、1 s当たり34.5〜37.6ペソと、生産原価とほぼ同じ水準にしかなっていない と述べている。このため、同協会では、枠内での部分肉(特にもも)の輸入を禁止 し、MAV枠外での丸どりのみの輸入を許可するよう、要望を出していた。 同国では、エストラーダ大統領の人気が落ちているといわれており、大統領就任 時に60%を超えていた支持率も、最近の調査では50%を切っていると伝えられ ている。このため、政府は人気の回復と、通貨危機により停滞している経済を回復 する切り札として、農業部門についての保護を強めているとみられている。しかし、 輸入禁止措置には外交関係もあることから、今後の政府の動向が注目されている。
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