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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 4月13日発】EUの家畜衛生・動物愛護に関 する科学小委員会は、3月21日に、ブロイラーの愛護に関する報告書を採択した。 同報告における勧告の概要は以下の通りである。 ブロイラーにおける大きな動物愛護問題は、成長および飼料効率を主に追求した 強度の選抜に伴う副作用と考えられる。成長期の鶏では、脚の障害、腹水症、突然 死症候群が見られ、繁殖用鶏では過酷な給餌制限などの問題がある。育種家は育種 指標として、健康の重要性にかなり高い優先度を置くべきである。また、責任を持 って自身の生産する鶏の動物愛護基準が容認できるものであることを示すべきであ る。 動物愛護の観点から見たブロイラーへの飼育密度の影響については、と畜年齢、 と畜体重、換気率、換気装置の能力、さらに気候条件により変化する。したがって、 良い室内気候環境を維持できる建物内では、高飼育密度問題は少ないようであり、 飼育密度に関する勧告はこの点を考慮する必要がある。飼育密度が30kg/uを超える と室内気候管理能力いかんにかかわらず動物愛護の点で問題が生ずるようであるが、 換気管理が悪いとずっと低い密度でも問題が生じるだろう。したがって、最大飼育 密度は、建物・気候管理能力に応じて決定すべきと勧告する。 動物愛護は飼育管理者の質に大きく影響される。機材管理の技術的な知識に加え、 ブロイラーの生態学について研修すべきである。 ブロイラーは毎日監視し、健康状態の悪い鶏は直ちに人道的方法でとう汰すべき である。特に脚の状態が悪い徴候には注意し、歩行がかなり困難な鶏はとう汰すべ きである。このほか直ちにとう汰する必要がある徴候は、重度の腹水、奇形、重度 外傷と発作である。 適切なモニター(監視)計画を確立し、公表すべきである。脚の健康評価を継続 実施すべきであり、各建物では、換気機能、空気および敷料の質、健康状態、淘汰 率・致死率をモニターすべきである。 現在の選抜における骨異常発生率の減少を確実にするため、ブロイラー系統の骨 の特徴を評価すべきである。また、脚および筋肉の問題を最小限にするため、遺伝 的選抜を改善するとともに、栄養管理の改善にもより努力すべきである。 敷料の表面は乾燥を保つべきである。 5〜6週齢の鶏では、過密および湿った敷料を避け適切な環境管理、換気率の調 整によって、見かけ温度(温度と湿度を組み合わせた数値)を40℃未満に保つよ う努めるべきである。 空気の質を管理し、動物愛護に悪影響の無いようにすべきである。特にアンモニ ア濃度は20ppmを超えてはならない。 成長しているブロイラーは24時間当たり最低2時間の暗やみ状況を与えるべき である。推奨最低光度は白熱光で第1週目100ルックス、その後は20ルックス である。 捕獲時のストレスと傷害を最小限にするように、従事者を適切に研修すべきであ る。病気や傷ついた鶏は他の鶏を捕獲する前に取り除くべきである。 生産性を最大にする繁殖用鶏の過酷な給餌制限は容認できない問題である。ただ し、自由給餌による体重増加は別の問題を起こすので、適切な改善が必要である。 また、このほかの問題解決のためにさらに研究が必要である。
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