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【シドニー駐在員 野村 俊夫 4月13日発】豪州の主要な豚肉業界団体の1つ である豪州豚肉生産者協議会(PCA)は、3月末に総会を開催し、他の政府系2 団体と統合して1つの新中核団体を設立することを満場一致で承認した。新団体の 名称はポーク・オーストラリア(PAL)で、順調に行けば来年7月から正式に発 足することになる。連邦政府のハワード首相もこれを歓迎する声明を発表し、豚肉 業界の再編合理化を全面的に支持することを明らかにした。 現在、豪州の豚肉業界団体は、@肉豚生産者と関連企業を会員とし、主に議会へ のロビー活動や業界全般の事業戦略の作成を担っているPCA、A主に豚肉消費拡 大事業などを実施している政府系機関の豪州豚肉公社 (APC)、B同じく政府系 機関で主に調査研究事業を行っている豚肉研究開発公社(PRDC)の3団体が中 心となっている。また、昨年4月には、APCの海外部門(輸出促進担当)が独立 し、豪州豚肉輸出連合(CAPE)が設立された。 このうち、PCAは会社法に基づく非営利法人であり、APCとPRDCはそれ ぞれ設立根拠法を持つ特殊法人である。また、PCAは生産者からの任意課徴金 (経産豚1頭当たり1.5豪ドル(約100円:1豪ドル=約67円))と関連企 業からの賛助金を財源とし、APCとPRDCは生産者からの制度課徴金(と畜1 頭当たりそれぞれ1.65豪ドル、0.7豪ドル)と政府から交付される事業交付金 を財源として活動している。 3団体の統合は数年前から検討されていたが、昨年5月に開催されたPCAの総 会で具体案が提示され、約1年間検討された結果、今回の合意に至った。 3団体の統合が強く求められた背景としては、ここ数年、豚肉市場の国際化が急 激に進展したことが挙げられる。 従来、豪州の豚肉産業は国内市場中心の需給均衡型であったが、97年ごろから カナダ産を中心に輸入が急増し、一時は業界が連邦政府に輸入停止措置を求める事 態に至った。これに対し、政府は輸入制限は適用せず、その代わりに国内生産の合 理化支援と輸出促進の措置を講じ、これがCAPEの設立につながった。その後、 台湾、マレーシアにおける疫害発生が豪州にとっては追い風となり、シンガポール や日本への豚肉輸出が大幅に増加した。こうした中、業界内で本格的な輸出志向型 産業に脱皮するための効果的な産業政策の必要性が認識されるようになったのであ る。 新団体は、任意・制度課徴金や企業賛助金などの従来同様の財源に基づいて運営 されるが、役員の過半数を生産者から選出して生産者の発言力を強化する。また、 特殊法人から民営化されるため、特定企業からの研究開発依頼を委託事業の形で実 施するなど、より柔軟な事業展開が可能となる。もちろん、統合による管理運営コ ストの削減もメリットになる。豪州の豚肉産業は、もともと潜在的な国際競争力が 高いとみられているだけに、本格的な輸出志向型産業としての今後の発展が注目さ れている。
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