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【シンガポール駐在員 外山 高士 2月17日発】フィリピン農業省は、99年 9月から禁止されている冷凍鶏肉や牛肉などの食肉の免税輸入のうち、高級牛肉に ついてのみ、その輸入と販売を再開することとし、免税地域内の2業者に対して、 輸入と販売を許可したと発表した。 同国では、99年に免税業者が冷凍鶏肉や牛肉などの食肉を免税輸入し、それら の販売が許可されていない一般のスーパーマーケットなどで小売販売するなど、違 法な行為が多く見られていた。さらに、これら免税での輸入量が99年6月の時点 で、冷凍鶏肉では98年の免税輸入量の約2倍、牛肉でも99年1〜6月の全牛肉 輸入量の約10%にまで増加した。 このため、冷凍鶏肉で、1s当たり45〜50ペソ(1ペソ=約2.9円)であ った小売価格が、26〜30ペソと大幅に下落するなど、国内生産を脅かす事態と なっていた。また、生産者団体から免税輸入品の違法販売を禁止する要望が強まっ ていたこともあり、農業省では、9月9日から免税業者による免税での食肉の輸入 と販売を禁止する措置をとっていた。これにより、免税業者が輸入する牛肉にも、 通常と同じ40%の高い関税率が課せられることとなり、免税地域内のレストラン などでも、特に高級牛肉の価格が上昇することとなっていた。このため、これらの 業者から、高級牛肉についての免税輸入再開の要望が出されていた。 今回輸入できることとなった高級牛肉は、主にサーロインやヒレなどのロイン系 と、ショートリブなどのバラ系の部分肉に限られている。骨付き・骨抜きにかかわ らず、肉質等級でプライム級のもので、フィードロットで肥育された去勢子牛もし くは未経産雌牛のものに限るとされている。 また、今回輸入許可となった2業者は、ともに米軍基地の跡地を利用している免 税輸入業者で、指定されている免税地域内のホテルやレストランなど、限られた業 種での利用が認められているだけである。また、これら免税輸入した牛肉を利用し て、缶詰などの食肉調製品を製造・保存したり、免税店などでの小売販売用に小分 けすること、または小売用に転売することは、この2業者を含めて禁止が継続され ている。 アンガラ農業長官は、今回許可した免税輸入される高級牛肉は、国産牛肉と市場 で競合しないとして、再開に踏み切ったと述べている。しかし、同国の景気回復に 大きく貢献している畜産業を、安価な輸入品の影響から保護する立場もあり、輸入 許可の条件がかなり厳しく設定されており、国内の牛肉生産への影響にかなり配慮 したものとみられている。
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