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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 1月6日発】EU統計局(EUROSTAT)は、この ほど99年の農業収入見込み(暫定値)を発表した。これによれば、EU15ヵ国 全体の実質農業収入(名目データを国内総生産価格指数で修正したもの)は前年に 比べ4%減少と推定されている。 各国別に見ると、12ヵ国で減少し、中でも、家畜価格の下落の影響を大きく受 けたアイルランド(13%減)およびデンマーク(11%減)で減少幅が大きかっ た。以下、スペイン(8%減)、ベルギー(7%減)、オランダ(6%減)、ドイ ツ(5%減)、フランス(4%減)、フィンランド(3%減)、ギリシャ(2%減)、 オーストリア(2%減)、イタリア(1%減)、イギリス(1%減)の順となって いる。一方、農業収入が増加したのは、ルクセンブルグ(5%増)、スウェーデン (6%増)、ポルトガル(14%増)の3ヵ国だった。 項目別の内容は、次の通りである。 1 実質農産物価格は5%低下 畜産物価格は6%低下した。豚価格は、98年以来の生産過剰で10%低下した。 鶏肉および鶏卵価格は年初の生産過剰と後半のダイオキシン汚染問題でそれぞれ8 %、10%低下した。牛および牛乳価格も低下した。 作物価格は4%低下した。油糧種子(22%安)および果物(8%安)の価格低 下が大きかった。ジャガイモ価格(13%安)も雨で高騰した98年価格に比較し、 大きく低下した。生鮮野菜、ワイン価格も低下した。穀物価格は前年並みだった。 2 農産物生産量は1%増加 国別では、ポルトガル(17%増)の増加が大きかった。また、ベネルクス諸国 (各4%増)、オーストリアおよびフィンランド(各3%増)も増加した。一方、 スペインは5%減少した。 畜産物生産量は、EU15ヵ国全体および大半の国で前年並みだった。例外はス ペイン(3%増、豚で6%増、牛乳で4%増)および牛と鶏肉で各3%減少したイ ギリス(2%減)だった。 EU全体の牛肉等の生産量は98年に減少したが、99年は前年並みと見込まれ ている。オーストリア(5%増)およびフランス(3%増)で増加する一方、5ヵ 国(デンマーク、ルクセンブルグ、オランダ、フィンランド、イギリス)では減少 と見込まれている。 豚肉等の生産量はEU全体で引き続き増加した(1%増)。ルクセンブルグで2 2%増加、スペインは6%増加と見込まれている。一方、イギリスでは8%減少と 見込まれている。 牛乳と鶏卵の生産量は減少と見込まれている。 作物については、穀物生産量は作付面積の減少を背景に6%減少した。ただし、 天候に恵まれたポルトガルでは穀物生産が17%増加した。穀物以外の作物生産量 は増加した。 3 実質農産物生産額は4%減少 4 生産資材コストは2%減少 肥料・飼料価格は5%低下し、エネルギー価格は1%低下した。 5 補助金は2%減少、税金は1%減少 6 以上から、費用に対する純付加価値(利益)は6%減少。また、農業労働力は 3%減少。この結果、実質農業収入(純付加価値÷労働力)は4%減少と推定され た。
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