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【シドニー駐在員 藤島 博康 1月7日発】飲用乳価格支持制度の存続の是非に 関して、12月20日までにビクトリア(VIC)州で生産者による投票が実施さ れ、89%の圧倒多数で同制度の廃止に賛成という結果となった。全豪生乳生産の 63%を占める同州での規制緩和が明確になったことにより、今年6月末で廃止予 定の加工原料乳価格支持と併せ、豪州の酪農制度改革は一気に加速しそうだ。 豪州の飲用乳に関しては、消費者への安定供給を目的に、州政府が生産者乳価を 設定している。今回、票決されたのは、連邦政府から17億4千万豪ドル(1,2 18億円:1豪ドル=70円)に上る業界再編支援パッケージが提供されることを 前提に、この価格支持制度を廃止し、飲用乳価格を市場取引にゆだねることへの賛 否。 農業分野に限らず広範にわたって規制緩和を推進する連邦政府への答申として、 VIC州政府は、既に昨年7月に制度廃止との方針を表明していた。しかし、その 後の州議会総選挙で自由党と国民党による保守連合から労働党へと政権交代の際に、 生産者の意志を尊重するとの新政権の公約に基づき今回の投票が実施された。 投票結果を受けて、連邦および各州政府の農業担当大臣による特別会合が直ちに 招集された。席上、連邦のトラス農林漁業大臣は「VIC州での制度廃止が明確な ものとなった限り、他州の動向にかかわらず、VIC州産牛乳は今年7月1日から 豪州全域に流通可能であり、豪州全体としても廃止は不可避である」とし、ニュー サウスウェールズ(NSW)州やクインズランド州など、既に制度の存続を答申し ていた各州に再考を迫った。 飲用乳価格支持については各州ともほぼ同様の制度を持っており、現行制度下で は、州を超えての牛乳販売は制限されるよう図られている。しかしながら、酪農適 地であるVIC州で制度が廃止された場合、NSW州などに比べて生乳生産コスト が3割も安いとされるVIC州産牛乳が豪州広範にわたって流通する可能は高い。 VIC州での制度廃止により最も影響を受けるのは隣接し、消費人口も多いNS W州で、約3分の1の酪農家が離農に追い込まれ、所によっては地域コミュニティ ーそのものが存亡の危機に瀕するとの悲観的な予測もある。 NSW州のアメリー農業大臣は同州における制度存続に関して「(州内)すべて の酪農家を対象に協議、意見提出の機会を設けた上で、州政府としての意志決定を 行う」とし、酪農家の意志を尊重する旨、言明しているが、残された選択肢は少な い。 トラス農林漁業大臣は、今年7月のタイミングを逃しては業界再編パッケージは あり得ないとした上で、同パッケージをスムーズに導入するためにも、2月中には 連邦議会による審議が必要だとして、直ちに酪農制度改革に向けた対応策を示すよ う各州に強く求めている。
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